問い直される「プラットフォーム効果」
アマゾン出店をやめたワケ

 また、デジタル時代の新たなビジネスモデルとしてD2Cが注目を集める中、全く別の方向から「顧客接点」を見直す動きが出てきている。顧客とメーカーをつなぐ役割を果たしていたプラットフォームとの付き合い方が問い直されているのだ。

 たとえば、中小企業にとってはプラットフォームでの取引にかかる手数料負担も決して小さくはない。プラットフォームを利用する効果よりも負担が上回ってしまい、取引を見直すケースもある。

 飲食店向けの備品販売やグラフィックツールの制作などを行うHiRASAWAは一部の事業でアマゾンへの出店を行っていたが、今年に入って契約更新をやめた。15%の販売手数料が、事業の利益を圧迫するようになっていた。同社で「ビヒンのマルシェ」事業のマーケティングを担当するHiRASAWAミライ・クリエイティブ マネージャー渡辺敏勝氏は、こう語る。

「アマゾンの店舗ではオリジナル商品だけでなく卸の商品も扱っていましたが、価格競争も厳しく、売れたとしても手数料がかかるとほとんど利益が出ない。新規顧客の獲得に期待しましたが、コストを上回る効果はなく、契約更新を断念しました」

 今後は自社ECサイトに注力するとともに、既存の営業マンを活用した戦略に切り替えるという。

 費用負担に加え、プラットフォーム依存度が高ければ、プラットフォーム自体の方針やルール転換に左右されるリスクをはらむ。また、「ブランド価値」を考えて、プラットフォームを選択しないケースも出てきている。ナイキがアマゾンから撤退した理由の一つは、偽造品によるブランド棄損を危惧したことだとみられている。

 こうしたプラットフォームを巡る動きも、顧客との関係性のあり方を見直す一因となっている。