武漢の「華南海鮮市場」が起点とされる新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が昨年12月に始まって以来、公衆衛生関係者や動物権利擁護団体は、いわゆる「ウェットマーケット」、つまり幅広い種類の生きた動物がお互いに、また人間と間近に触れあう状況に置かれ、その場で食肉処理・販売に供される市場について、もっと厳しく監視するよう要求している。
新たな病原体の異種間感染という点ではうってつけの条件を備えているが、こうした市場はアジア全域に見られ、レストラン、観光、伝統的医療といった他の産業を支えている。
筆者らは2人とも、中国における野生動物取引を取材してきた。2016年にはマカオ・香港との境界に近い中国の複数の街で、ヤミ金融に関する調査のためにインタビューを行う中で、あるヤミ金融業者から、マネーロンダリング事業に関する情報以上の申し出を受けた。
「今夜サルを食べたければ、簡単に手配できますよ」と彼女は自慢した。そして筆者らに、珠海郊外にある家族経営のレストランの住所を教えてくれた。
われわれは、この「野味(ye wei、野生動物の意)」をご馳走になることは断ったが、いずれにせよこのレストランを訪ねてみることにした。珠海中心部から約1時間ほど離れたその場所で、われわれがすぐに察したのは、都市の中心部から離れた目立たない場所に入れば、法令を無視して野生動物を提供するレストランは珍しくない、ということだった。そうした動物の大半は、地元の密猟者や、武漢にあるような「ウェットマーケット」から仕入れていることも分かった。
中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は2月末、COVID-19対策の一環として、水生動物を除く野生動物の取引・消費を恒久的に禁止する旨を発表した。もっとも、(例えば)中国ではすでに絶滅危惧種であるシマアオジが保護対象になっているにもかかわらず、昨年9月に北京郊外の農場で警察が押収した1万羽の鳥類の中に、このシマアオジも含まれていた。中国南部の複数のレストランに向けて出荷され、高額のメニューオプションとして提供される予定だった。
こうした例を見ると、新たに導入された対象範囲の広い禁止措置はいったい成功するのかという疑問が生じる。