習慣をつくり直したいなら、
まず「余白」をつくるといい
――わかりやすく言えば、「生活習慣を根本からつくり直す」くらいの考え方が必要だということですね。それってなかなか大変なことだと思いますが、こういうときにも有効なマインドフルネスはありますか?
おすすめしたいのは、ブリージングスペースという方法ですね。これはいわば「余白」をつくるための方法です。
ジュディ・ブラウンという作家が書いた『火』という詩のなかに「火が燃えるとき 薪木のあいだには空間がある 呼吸する空間がある(What makes a fire burn / is space between the logs, / a breathing space.)」という一節がありますが、何かを新しくつくり直すエネルギーには、火を燃やすための「空間」が欠かせません。ブリージングスペースは、ゆとりが持てずに慢性的にストレスを抱えてしまっている脳などには、非常に有効な方法ですね。
こういうときこそ「余白」や「ゆとり」が必要です。不確実性が高い状況においては、人々から心のゆとりが一気に失われ、人間のエゴが剥き出しになります。ある方は「パニックになることは、ウイルスの脅威よりもより大きなダメージを与えかねない」と語っていましたが、本当にそのとおりだと思います。
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外出制限がはじまる少し前、スターバックスへ行くと、誰か咳をしていないかという張り詰めた空気が店全体に感じられました。店内のお客のうちアジア人は自分ぐらいだったので、思わず私も緊張で身体がこわばったのを覚えています。
コーヒーを受け取って足早に店から出ようとしたとき、ある白人の男性が私のためにドアを持ってくれているのに気づきました。彼の親切が身にしみるようでした。
心のなかに「余白」があったからこそ、彼はあの行動がとれたのでしょう。
ゆとりある心こそが、この不安を乗り切るカギになるように思います。
医師(日・米医師免許)/医学博士(PhD/MD)
イェール大学医学部精神神経科卒業。日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間にわたり従事する。
現在、ロサンゼルスにて「TransHope Medical」院長として、マインドフルネス認知療法やTMS磁気治療など、最先端の治療を取り入れた診療を展開中。臨床医として日米で25年以上のキャリアを持つ。趣味はトライアスロン。
著書に、27万部突破のベストセラーシリーズ『最高の休息法』『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』(ダイヤモンド社)などがある。