NASH,脂肪肝お酒を飲まない人でも脂肪肝になる恐れがあります Photo:PIXTA

会社やお得意先との飲み会があると、ついつい飲み過ぎたり、食べ過ぎたりしてしまう40代~50代の方は多いのではないでしょうか。日々のちょっとした飲み過ぎ・食べ過ぎが積み重なると、肝臓の恐ろしい病気を招きかねません。フォアグラのように脂肪が肝臓に蓄積する脂肪肝やアルコール性肝炎、肝硬変などは、飲み会になると暴飲暴食をする人、毎日お酒を飲む人などがかかりやすい病気です。なぜ、よくお酒を飲むと肝臓の病気にかかりやすいのでしょうか?食べ過ぎは肝臓にどのような影響を与えるのでしょうか?その原因と改善方法を、横浜市立大学大学院医学研究科循環制御医学教授の石川義弘医師にうかがいました。

日々の飲酒が原因に!
無意識のうちにむしばまれる肝臓

 アルコール性肝疾患とは、長期(通常は5年以上)にわたるアルコールの過剰摂取によって引き起こされるさまざまな病気の総称です。具体的には、「アルコール性肝炎」や「アルコール性脂肪肝」「アルコール性肝硬変」などの病気をもたらします。

 アルコール性肝疾患を引き起こす原因は、その名が示すとおり“大量にアルコールを摂取すること”です。40代~50代の中年サラリーマンは、どうしてもお酒を飲む機会が多くなりがちです。飲み会のつきあいでビールを飲んだり、毎日の楽しみとして家で晩酌をしていたりする人も少なくないでしょう。

 しかし、お酒の飲み過ぎは肝臓を危険にさらすことになります。

 アルコールは肝臓で分解・吸収され、中性脂肪となって体の各細胞にエネルギーとして送られます。このとき、必要以上に作られた中性脂肪は肝臓内にためこまれてしまいます。肝臓(肝細胞)の30%以上に中性脂肪がついた状態を「脂肪肝」と呼びます。脂肪肝になった肝臓では血流障害が起こり、肝細胞が次第に壊死(えし)して肝機能が低下していきます。こうなると、アルコールやアンモニアなど体にとって有害な物質を解毒する作用が弱まったり、摂取した食事からエネルギーを作りだす代謝機能が衰えたりして、全身に倦怠(けんたい)感を覚えるようになります。

 アルコール性脂肪肝を放置していると、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変へと進行し、最終的には肝細胞がんを引き起こすおそれもあります。

 こういったアルコール性肝疾患の恐ろしいところは、重篤化するまでほとんど自覚症状がないことです。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、全体の約80%が損傷しても正常な働きを見せようとします。ですから、「なんだか全身がだるいな」と感じたときは、すでに病気がかなり進行しているかもしれないのです。