「小さなアーティスト」を困惑させた問い

「まるで子どもの絵みたいだ……」

そう思った方、安心してください。
じつを言うと、これは2歳のある女の子が描いた絵です。
その子はこの絵を描き上げると、お母さんを呼んで「みて」とうれしそうにいいました。

ここで想像してみてください。
もしもあなたがこの女の子の親だったら、絵を見てどのような言葉をかけますか?
あなたが言いそうな答えはこのなかにありますか?

「上手だね~! 何の絵描いたの?」
「虹かな?」
「この丸いの、なあに?」

そのときの女の子とお母さんのやりとりを見てみましょう。

女の子「みて」
お母さん「なに描いたの~?」
女の子「……」
お母さん「虹?」
女の子「……」
お母さん「う~ん、なんだろう?」
女の子「……」
お母さん「(茶色い部分を指差して)コロッケ?」
女の子「……」

女の子は自分から「みて」と笑顔で声を掛けたにもかかわらず、お母さんからの問いかけに対しては、中途半端な表情を浮かべて首をかしげるばかり。最後には別のことに興味が移ったのか、会話を放り出してほかの遊びをはじめてしまいました。

結局、お母さんには、女の子がなにを考えてこの絵を描いたのかはわからずじまいになってしまったようです。

さて、その子にはいったい「なに」が見えていたのでしょうか?
ここからは勝手に想像を働かせてみたいと思います。

身体の動きを受け止める「舞台」

私たちは、「絵になにが描かれているのか」がわからないと、なんとなくすっきりしません。
お母さんの「なに描いたの~?」「虹?」「コロッケ?」などの問いかけは、「絵=なんらかのイメージを映し出すもの」という1つの「ものの見方」から発せられています。

おそらくあなたも、彼女と同じように「絵が映し出しているイメージ」を問う言葉かけを思いついたのではないでしょうか。