村田社長は副会長に、
山内会長留任で影響力

 相川専務は6月24日の株主総会を経て就任予定。前社長の山内隆司会長(73歳)以来、3代続けて建築畑の出身者が社長となる。建築出身は業界の社長の鉄板ルート。3代続けて東京大学工学部建築学科卒でもある。一方で、山内会長より前の社長には、土木や管理部門の出身者がいたため、大成は他の大手ゼネコンと比べると、さまざまな部門から社長を輩出してきた。

 相川専務は、今後強化したい分野として、エンジニアリング事業、都市開発事業、リニューアル事業、エネルギー関連事業、海外建設および開発事業の5つを挙げた。中でも医薬品や半導体の工場、物流施設など特殊な施設の企画から設計、施工、維持管理まで行うエンジニアリング事業に注力する。「建設事業を結びつけることで、中期的に安定できる」(相川専務)とにらむからだ。

 競争激化に対しては、コスト削減で対抗する。マンパワーを増やすべく、ICTを活用するロボット化など生産性向上に向けた技術開発を早急に進める。選別受注を徹底する仕組みはかつて山内隆司会長が作り上げているが、新たな打開策が見つけられるかが鍵になる。

 村田社長は代表権のある副会長として、新社長のサポートと、安全や働き方改革をけん引することになる。山内会長は会長職に留まり、今年度からスタートしたガバナンス体制の見直しや取締役会の議長を担うほか、経団連副会長として財界活動や、日本建設業連合会の会長職などの業界団体活動を続ける。

 山内会長は、選別受注による財務改善の立役者であり、建設業界初の経団連入りを果たした実力者だ。新体制後もその影響力は業界においても、社内においても依然大きいと考えられる。その上で、大成の経営が山内会長、村田次期副会長、相川次期社長によるトロイカ体制となるのか、院政となるか、あるいは完全に世代交代するのか。コロナ危機に直面する新社長の経営手腕が試される。