新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。子どもたちにとっても、これからはオンライン授業が広がるなど学習スタイルが変化し、社会に出るまでに習得すべき能力も、親の時代とはかけ離れて変化していくことが考えられる。そんな変化の激しい現代において「親は子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる人は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、生理学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり 』(加藤紀子著)にまとめた。
「コミュニケーションの取り方」から「家での勉強のしかた」「遊び」「習い事」「ほめ方・叱り方」「読書」「英語」「スマホ対策」「ゲーム対策」「食事」「睡眠」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー。100の「してあげたいこと」を実践するにあたっては、さらに詳細な「421の具体策」も提示し、理屈だけでなく、実際に何をどうしてあげればいいのかということまで丁寧に落とし込んでいる。発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめ上げた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋して紹介する。
「聞いてもらうこと」が学力に影響する?
子どもは大人にしてみれば何がおもしろいのかよくわからないような話、とりとめもない話をたくさんしたがります。今日は誰と遊んだか、食べたものや好きな本、空想など、子どもは無条件に聞いてもらえることで安心感や落ち着き、自信、認められた喜びを感じます。
話を聞いてあげると子どもは「話すことが楽しい」「話すと心が軽くなる」と感じ、もっと話したいと思うようになります。そこから豊かな表現力、語彙力も育まれていきます。
脳機能開発が専門の東北大学、川島隆太教授が仙台市に住んでいる7万人の小中高生を2010年から7年にわたり追跡調査したところ、「家の人にしっかり話を聞いてもらった」と答えた子は、学力が上がる傾向が見られました。子どもの話をちゃんと聞いてあげるかどうかは、学力にも影響するようです。
子どもの話、どうやって聞けばいい?
アメリカの臨床心理学の大家で、シカゴ大学、ウィスコンシン大学などで教授を務めたカール・ロジャース博士は、アクティブ・リスニング(積極的傾聴)を提唱しました。
ロジャース博士は、自らがカウンセリングを行なった多くの事例から、聴く(傾聴する。心をこめて聞く)側に大切な3つの要素として「①共感的理解」「②無条件の肯定的関心」「③自己一致」を挙げています。
どれも表現が専門的で漠然としていますが、わかりやすくまとめると次のようになります。
共感する(1)
子どもが話をしているときは、子どもの立場になって共感しながら聞いてあげます。「疲れた」と言ってきたら「疲れたね」と子どもの言葉をくりかえしたり、「へえ」「そうなんだね」と相づちを打ったりうなずいたりしながら聞きます。
否定しない(2)
主役はあくまでも話し相手である子どもであり、立場が逆転しないように気をつけます。そのためには、「○○したほうがいい」「××しなさい」などと大人の意見を押しつけず、質問もできるだけ手短にし、話題を変えないようにします。
たとえ子どもの話が間違った内容でも、「でも」「だけど」と否定せず、肯定的に話を聞きます。子どもが間違ったやり方で何かしてしまった場合でも、まずは否定せず、共感してあげてから意見やアドバイスを伝えると、子どもは素直に受け入れやすくなります。
話の内容をよく確認する(3)
子どもの話でわからないところをそのまま聞き流してしまうと、子どもは「話を真剣に聴いてくれない」と感じてしまいます。わからないときは質問し、くわしい内容を確認します。
聞いてあげられる「余裕」をもつ
ストレスや過労でイライラしたり疲れていたりすると、子どもが話しかけてもうわの空になってしまいます。
子どもの話をしっかりと聞いてあげるには、大人の側も心身ともに余裕が必要です。
たとえば、仕事などで忙しく、疲れてしまったときは、できあいのお弁当を買ってきたり出前をとるなどして、なるべくリラックスできる時間をもつようにするとよいでしょう。
(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』からの抜粋です)
川島隆太「学力を伸ばすたった一つの親の習慣」(「プレジデント Family」2017秋号)
「メンタルヘルス教育研修担当者養成研修テキスト」(厚生労働省、中央労働災害防止協会、2010年9月)