銀行vsコロナ#3
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健全に見える日本の金融システム。打撃を受けるとすれば、どのようなルートがあり得るのか。特集『銀行vsコロナ』(全12回)の#3では、日本銀行で企画局長、金融政策担当理事を務め、金融危機のメカニズムに精通している門間一夫・みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミストに今後の見通しを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 布施太郎)

楽観シナリオは消えた
体力奪われる実体経済

――今回のコロナ危機が銀行や金融システムに与える影響をどう見ていますか。

 当初、多くの人が先行きを楽観していたが、それは感染が終息したら経済が元に戻るという認識だったからだ。2008年のリーマン危機は、もともと経済が不健全だったことが引き金となったため、経済の調整に何年もかかった。今回の危機は性質が異なり、コロナ危機以前の経済は健全な状態だったので、そこに戻るだけなのだから回復は早い、つまりV字回復が可能だと考えられていた。

 しかし、次第にコンセンサスになりつつあるのは、社会的距離を取るなどの制約はなかなか解除できないということだ。となると、一部の経済活動はなかなか元には戻らない。半年や1年どころか、場合によっては2年、3年単位との見方も出ている。そうやって抑え込まれているうちに、健全な経済の体力であっても、徐々に消耗していく。いつまで体力が奪われ続けるのかが論点になっており、金融システムにも影響が及ぶ可能性は否定できない。

――実体経済の悪化により、銀行は貸出債権が劣化し、与信コストが膨らむ懸念が出ています。

 現在の金融システムは、リーマン危機時よりも頑健性、ショック耐性が格段に強い。過去の反省を踏まえて国際的に金融規制改革を行ってきた結果、どの国の銀行も厚い資本と十分な流動性を備えている。多少のショックでは金融システムの安定は崩れない。それがリーマン危機との大きな違いだ。

 しかし、IMFが4月に発表した世界経済見通しはマイナス3%だ。前提は今年後半には感染が終息し、来年はプラス5.8%のV字回復となる見通しだ。それならばなんとか今年を耐え切れば来年良くなるので、その間をつなぎさえすれば最終的には信用コストが増えないという見立てになる。

 ところが、IMFは感染の終息までにさらに時間を要するリスクも十分にあるとして、その場合、今年は追加的に3%悪化する可能性も示した。かつ、来年はほとんど成長が見込めない可能性もあるとしている。このシナリオになってくると、与信コストの増え方がだいぶ変わってくるだろう。