「食品ロス削減を推進しています」――。セブン-イレブンの入り口でこんな横断幕を目にした読者も多いだろう。これはSEJが5月11日から始めた「エシカルプロジェクト」をアピールするものだ。

「エシカル」とは「倫理的な」という意味。販売期限の5時間前、一部は9時間前の食品に従業員がシールを貼り、電子マネー「nanaco」会員の客が購入すると、税抜き価格の5%分のポイントが還元されるというものだ。

 販売期限が迫った食品が優先的に購入されることで、廃棄量を減らすことが目的だとSEJは強調。だから“エシカル”をうたっているわけだ。2019年2月に本部の直営店10店が還元率3%で実験した際は、直近12カ月の平均と比べて月間で1店当たり約10万円分の廃棄を削減できたという。

 コンビニ加盟店でもとりわけSEJでは、本部社員が長年「廃棄は投資」「(販売する)機会ロスをなくしましょう」などと加盟店を“指導”し、食品を目いっぱい仕入れさせてきた。廃棄額の大半は加盟店の負担だ。セブンの加盟店では月間の廃棄負担額が平均で60万円程度といい、他のチェーンよりも多いとされる。その分、加盟店の利益を圧迫してきた。

 SEJがようやく加盟店の負担を削減し、同時に食品ロスという社会課題の解決に踏みだしたのであれば、大いに称賛されるべきだ。だが残念ながら、その“エシカル”な建前を疑う問題が浮上する。

「nanacoを徹底的にオススメする」――。

 あるセブン加盟店オーナーは、エシカルプロジェクト開始と同時に、nanaco会員獲得を強く求める文書を本部社員から渡された。nanacoカード発行済み数は2月末時点でモバイル会員含め6905万枚で、SEJ本部はさらなる増加を目指す。

 だがここで不祥事が露呈した。神奈川新聞は5月28日、nanacoカードの販売で生じる売り上げを本部社員が架空計上していたと報道。セブン&アイ・HDは事実関係の調査を始めた。