アイデアはいつも現場から湧いてくる

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宗次德二(むねつぐ・とくじ)
1948年石川県生まれ。愛知県立小牧高等学校卒業後、八洲開発株式会社を経て1970年大和ハウス工業株式会社に入社。1972年に結婚、翌年独立して岩倉沿線土地を開業する。1974年喫茶店「バッカス」を開店。1978年カレーハウスCoco壱番屋を創業し、妻とふたり客商売を天職と定める。1982年株式会社壱番屋設立し、代表取締役社長に就任。1998年同社代表取締役会長に、2002年には引退し、創業者特別顧問となる。2003年NPOイエロー・エンジェルを設立し、理事長に就任。2007年クラシック音楽専用の「宗次ホール」を名古屋市内にオープン。2012年株式会社ライトアップ設立し、代表就任。
著書は、『繁盛させたければお客様の声を聞け! 』(旭屋出版)、『日本一の変人経営者』(ダイヤモンド社)、『Coco壱番屋 答えはすべてお客様の声にあり』(日本経済新聞出版社)『夢を持つな!目標を持て!』(商業界)など。

山下:「カレーハウスCoCo壱番屋」のメニューのネーミングにも「1辛」「2辛」とか、「口中ボーボー」とか「汗はタラタラ、耳までマッカ」「目はパチパチ、十二指腸もビックリ」など、おもしろいものがたくさんありましたよね。

前回お会いしたとき、私が「どうすれば、そんなにたくさんのアイデアが湧いてくるのですか?」とお伺いすると、宗次さんが「現場にいれば自然と湧いてくる」とおっしゃっていたのが印象的でした。

宗次:旅先でも、ゴルフをしているときでもアイデアが出てこないわけではありませんが、それよりもやはり、仕事の現場にいたほうが質の高いアイデアが出てきます。それはもう、湯水のように湧いてくる。

湧き上がってきた10のアイデア、あるいは20のアイデアをすべて試してみるというより、ひとつだけ形にしてみる。するとうまくいく確率が高くなります。
細かい失敗は日常的にありますが、現場を大切にしてきた結果として、大きな失敗をしたことはありません。「順風満帆」だと言えると思いますね。

山下:「現場を大切にする」とは、具体的にどういうことでしょうか?

宗次:お客様の胃袋を掴むために、同業者たちも必死です。価格競争や時流に乗ったメニュー開発でシェアの奪い合いをしています。
私は他社のリサーチをしたことはないし、「値下げをしないとお客様が奪われる」と考えたこともありません。経営判断に迷ったら、お客様を第一に考えることです。たとえ経費がかかっても、お客様が「嬉しい」と言ってくださるのであれば、ひとつでも多くかなえるべきです。

私は、下げられた食器を見るだけで、お客様の気持ちがわかります。価格やライバルに気をとられるのは、現場を見ていないからです。真実は現場の中、つまりお客様のお声の中にしかありません。