「お客様 笑顔で迎え 心で拍手」

宗次:私たちは、経営コンサルタントの力を借りていません。これだけチェーン展開している事業では珍しいかもしれないですね。
専門家の知識よりも、業界の常識や固定概念にとらわれないことのほうが大事です。素人的な発想でもいいから、新しいアイデアを出すことを優先しています。

そのためには、くどいようですが現場です。よそ見している暇があったらお店に1軒でも出て、社員さんやパートさんと一緒に「いらっしゃいませ」と声を出していたほうが結果につながると思います。

山下:宗次さんは、世間一般から見たら経営の達人です。それなのにご自身のことを「素人経営」、「超三流経営者」と謙遜されていますよね。

宗次:創業したばかりのころは、信用もお金もありませんでしたから、地道にやっていくしかありませんでした。現場で一人一人のお客様を大事にしながら、心を込めて「ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えていくうちに、少しずつ口コミが広がっていったんです。

決して私が経営に通じていたわけではなくて、現場で学んだことを実践していっただけです。なので、いまだに自分のことを「素人」だと思っていますよ。

山下:「カレーハウスCoCo壱番屋」の創業時に思いつかれたという、「お客様 笑顔で迎え 心で拍手」。この標語には衝撃を受けました。
宗次さんの著書の中にこの言葉を見つけてからは、何度も読み返しています。

宗次:この標語も、現場の実践から出てきた言葉です。
「CoCo壱番屋」の前身である喫茶店を開業した当時、「モーニングサービスがないとダメだ」とよく言われました。案の定、お客様は来てくれません。
でもようやく、1人、2人と来ていただけるようになって、もう夫婦で拍手ですよ(笑)。

お客様を驚かしてしまうから実際には手は叩きませんが(笑)、「やっと来ていただけた。待っていました、ようこそ!」という感謝の気持ちで、ドアが開く寸前まで心の中で拍手をしていました。

山下:接客業において「笑顔」の大切さが語られることはよくありますが、お客様を「拍手」で迎える経営者がいるとは驚きでした。
宗次さんが常々、「謙虚な姿勢で一所懸命やっていたら、素人経営でもお店は流行る」とおっしゃっているように、お客様を第一に考え、現場の声に耳を傾け、目的をもってひたむきに努力することが経営の要諦(ようてい)なのですね。

(第3回に続く)