音楽フェス「スーパーソニック」の
開催を表明した理由
――場所は千葉マリンスタジアムですね。
去年の秋にスタジアム側から「9月の4連休に会場を使用しないか」と逆オファーがありました。そこで音楽フェスの開催を決定し、アーティストとの出演交渉を開始。今年の1月に開催を公表しました。
――年内の音楽フェスは開催が絶望視されていたため、スーパーソニック開催の発表には驚きました。なぜあえてリアルイベントとして開催することを決めたのでしょうか?
サマーソニックは日本の「4大ロックフェス」のひとつといわれています。ほかの3つの音楽フェスが中止や延期をアナウンスする前、それぞれの主催者が私に連絡をくれました。いかに苦渋の決断だったかを聞いて、胸が苦しくなりましたね。
今年はサマソニを開催しない予定でしたが、それでいいのだろうか、このままスーパーソニックまで中止するという横並びの決断が本当に正しいのだろうか。そう考えていたときに、音楽の舞台関係者から「生活に限界が近づいている」「誰かが(音楽活動を)再開してくれないと希望を持てない」といった声を聞きました。
緊急事態宣言が解除されても、音楽産業は依然として厳しいままです。さすがに9月にはどこかが動き出さないと、音楽に携わる人たちはやっていけなくなるでしょう。9月にリアルイベントとしての音楽フェスが開催されるとなれば、音楽ファンも音楽関係者もそこを目標にがんばることができます。
9月開催、都市型フェス、屋外――
開催の道は閉ざされていない
スーパーソニックの会場であるマリンスタジアムは天井部分があいているため、3密の1つの「密閉」はクリアできます。9月開催のため、8月の真夏にマスクを着用するよりは幾分、暑さはマシになるはずです。そしてあくまで都市型フェスなので、お客さんが都市から出て、郊外の開催地へ移動するわけではない――。
こうしたいくつかの巡り合わせといいますか、状況やタイミングをふまえると、私たちにはまだ開催を可能にする要素が残っていたのです。「お前たちから音楽フェスやライブをリスタートしなさい」と言われているような、そんな使命感にもかき立てられました。
音楽フェスは今やひとつのプラットフォームです。そう考えると、音楽業界に携わる人たちへの支援を私たちが考えるのは当然です。それが新しいプロモーターの姿ではないでしょうか。
スーパーソニック開催に向けてのクラウドファンディングを立ち上げたのもその一環です。お金をもらうだけでなく、音楽フェスにおけるコロナ対策や、舞台関係者への仕事をつくっていくための、音楽業界の未来のための前向きな支援です。
――リアルイベントの開催に関しては、ほかの音楽フェスのプロモーターや業界団体などと情報共有したのでしょうか?
していないです。たとえ共有したとしてもOKはもらえないでしょう。お客様からの愛に対して、私たちの手元にある要素を活用してお返ししたいという気持ちですので、あくまで私たちの意思です。