――オンラインで観覧する場合のチケット料金は、正規の料金と同じでしょうか?
検討中ですが、正規の料金の半額以下など、正規の料金よりはだいぶ安くする予定です。
――どのような課金システムを利用するのでしょうか。
オンライン上のライブを閲覧する際の課金システムに関しては、国内外でさまざまなサービスが生まれています。どこと組むか、どのような仕組みにするかは今、急ピッチで進めています。
――利益は出せるのでしょうか?
キャパを削った分、オンライン配信で利益を出さなければと思っています。世界が注目すれば、オンラインで世界に発信することで、世界中に見てもらえる可能性があります。
あくまで企業なのでビジネス上の成功があるに越したことはありませんが、今回は手探り状態のチャレンジです。正直、プラマイゼロにできれば及第点と思っています。やることに意義があるのです。
「日本でも音楽フェスが始まった。ようやく音楽の出番だ。次は自分の国で始められるかもしれない」――。
世界中の音楽ファンや音楽関係者にそうした勇気を与えられるはずです。世界の音楽がリスタートするきっかけにしたい。そういう思いで挑んでいます。日本からそれが始まったとなると、次に新しいチャレンジをするときに、世界中の方が協力してくれるかもしれません。そのための投資でもありますね。
アフターコロナの
音楽業界はどうなるか?
――アーティストは来日できるのでしょうか?
実はそこが一番の懸念点です。肝心なアーティストが入国できないという事態は何としても回避しなければなりません。
あまり知られていませんが、アーティストや音響などのスタッフというのは、必ずビジネス(就労)ビザを申請します。そうすると当然、ビジネス上の渡航となるため、入国規制緩和の段階は通常の観光客よりも早いとみられています。そうした動きを注視しつつ、万全を期して早い段階で渡航申請を行っています。
――リアルイベントの開催に関して、アーティスト側からのキャンセルはありましたか?
今のところないですね。みなさん、趣旨に賛同してくださっていますし、非常に楽しみにしてくれています。
――日本の音楽フェスは、海外の音楽フェスと比べてだいぶオンライン配信が遅れている印象です。
日本は「BS放送」や「CS放送」などとタッグを組んで開催するケースが多いので、権利の関係上、オンライン配信への障壁が高いのでしょう。
海外の音楽フェスはとにかく多くの人に見てもらって、そこにスポンサーをつけるやりかたです。日本は既存のシステムはできるだけ壊したくないんです。チケット業界はまさにそうですよね。今もコンビニなどで紙のチケットを発行しているのは世界では日本くらいです。ただ、世界の大きな流れには負けるので、コロナ禍で一気にオンライン配信の流れは進むと思います。
――コロナによって今後の音楽業界は変わっていくのでしょうか?
今は何とも言えないですね…(笑)。コロナ禍のような体験は初めてなので皆、「変わっていかなければ」と焦りますが、SARS(重症急性呼吸器症候群)を経験済みのアジアの国々はコロナからの立ち直りが比較的早かった。でも、コロナ以前と比べてそう大きく生活スタイルが変化しているわけではありません。
人間というのは良くも悪くもとても忘れやすい。ワクチンができて、コロナがインフルエンザやそれよりも弱い存在になることがあれば、また徐々にこれまでと同じ音楽の楽しみ方に戻っていく可能性があります。もちろんある程度の変化はあると思いますが、「忘れやすい」という人間の原理はそう簡単には変わらないはずです。
ただ、いつ元に戻るかはわからないので、状況に合わせて順応していくことは必要と思います。私たちクリエイティブマンを含め、音楽プロモーターや音楽業界も。そのためには何よりポジティブでいることですね。ポジティブに生き、ネガティブなことがあれば対処する。初めからネガティブに考えても何も得はありません。ポジティブなほうが生きるうえで得ですよね。
――ありがとうございました。