会場と来場者がコロナ対策をしながら
音楽を動かすことが大事

――2月末にライブを決行したロックバンド「東京事変」や格闘技イベント「K-1 WORLD GP」が開催された時は、多くの批判が集まりました。こうした批判への恐れはありますか?

 もちろんあります。今、同業者がリアルイベントの開催に二の足を踏む要因でもあります。

 ただ、ネガティブなものもポジティブなものも含め、今はコロナに関する多くの情報や知識が伝わってきています。コロナの特徴も少しずつですがわかってきています。以前のようなまったく見えない敵ではなく、当時の状況と今の社会は同じレベルではありません。

 今のような「withコロナ」の環境下では、会場と来場者がしっかりと対策を施しながら音楽を楽しみ、音楽を動かしていくことが大切です。コロナ禍に過度におびえていても仕方ないのです。適切におびえてしっかりと対策をとりながら、生活を回していかなければならないと思います。

数万人規模の音楽フェスが開催されるのは
コロナ禍が始まってから世界初

――リアルイベントの開催にいたっては、それを後押しした参考事例があるのでしょうか?

 ありません。コーチェラ(編集部注・Coachella Valley Music and Arts Festival。米国カリフォルニア州の砂漠地帯で毎年開催される世界最大規模の音楽フェス)やグラストンベリー(編集部注・Glastonbury Festival of Contemporary Performing Arts。英国ピルトンの約3.6平方キロメートルの広大な農場で開催される音楽フェス。フジロックフェスティバルのモデルとなった)などは軒並み中止となりました。

 お客様を入れ過ぎず、オンライン配信とのバランスを取り、密集でも無観客でもない、新たなフェーズに私たち音楽プロモーターがチャレンジしていかなければいつまでたっても何も始まらないままです。

 スーパーソニックが無事に開催されれば、数万人規模の音楽フェスが開催されるのは、コロナ禍がになってからは世界初となるでしょう。世界中から注目されることはプレッシャーでもありますが、コロナとの共存がいつまで続くかわからない中、世界の音楽産業のひとつの指針となるはずです。

――どのような感染症対策を実施予定でしょうか?

 入場時には非接触型体温計やサーモグラフィーによる検温を行います。会場には、消毒や洗浄可能な設備を設置し、観客にはマスク着用を促します。そのほか、ソーシャルディスタンスを保つレイアウトや誘導スタッフの人員配置、すべてのエリアに救護を配置するといった対策を行います。次々と感染症対策のレギュレーションは変わっていくと思いますので、政府や地域の自治体といった関係諸機関などからの発表や専門家の意見を注視しながら、その時点で最適な対策を反映していくつもりです。

――ソーシャルディスタンスはどのように保つのでしょうか?

 まずキャパシティ(来場者数)を通常よりも減らすことは必須となります。東京の3日間開催で、当初は1日5万人のキャパを考えていましたが、これを1日3万人以下にすることを考えています。大阪は1日2万人以下の予定です。サマソニは毎回、観覧スペースを細かく区分けしていますが、スーパーソニックもこの形式を踏襲しつつ、ひとつの区分けの人数を減らします。

 さらに砂浜を開放するなど、空間をできるだけ広く活用します。そこでシートを敷いて友人や家族とくつろいでもらえば、おのずとほかのグループとの距離が生まれます。

 もちろん会場に来られない人、行きたくない人もいるでしょう。そのためあらかじめ権利関係を調整しておき、オンライン配信でリアルタイムにライブを閲覧できるようにします。