「人生を変えるのに、最も効果的なライフハックとは何だろう?」と、デイヴ・アスプリー氏はこれまで20年近くかけて、シリコンバレーの最新のラボからチベットの修道院まで、世界中のあらゆる場所に足を運んで、体当たりの自己実験で研究してきた。
さらに、脳科学、生理学、東洋哲学、心理学といった分野の専門家の他、アスリート、医師、ライフハックの達人まで、400人以上の研究者や成功者たちに、「最も重要な3つのことをあげてほしい」と取材を重ねてきた。
そんな探求の果てにつかんだ答えを「脳」「休息」「快楽」「睡眠」「運動」「食事」「幸福」「人間関係」等の分野に体系化、1冊の「究極のハック集」にまとめたのが『シリコンバレー式超ライフハック』(デイヴ・アスプリー著、栗原百代訳)だ。
著者自身、「20年前にこの本に載っていることを知っていたら、どんなに人生が違っていただろう」という衝撃的なハックが目白押しの本書から、一部を特別に公開する。

目標は、毎日「ノー」と言われること

「100日連続『無謀なお願い』をして断られるチャレンジ」の意外な結末Photo: Adobe Stock

 恐れを克服するための探求の過程で、僕はさんざんクレイジーなことを試したが、ジア・ジアンほどには過激ではなかった。ジアは起業家で講演者、ブロガーであり本の著者でもある。「拒絶」について語ったTEDトークで彼のことを知っている人もいるかもしれない。それは口コミで広まり、いまや400万回以上も視聴されている。

 ジアにインタビューしたとき、恐れをハッキングするための破天荒な手法──本人はそれを「拒絶セラピー」と呼んでいる──について聞いた。ジアの考えでは、身体が慣れてしまえば、拒絶される可能性に直面しても恐れを感じなくなるという。

 ジアが設定した目標は、見ず知らずの人にとっぴなことを頼んで、1日1回、100日間、拒絶されるということだった。ファストフード店に行って、ハンバーガーを食べ終わったときに「おかわり」を頼んだ。見知らぬ人の家のドアをノックして、庭でサッカーをさせてもらえないかと頼んだ。見知らぬ人にお金をくださいと頼んだ……などなど。ジアの目標は毎日「ノー」と言われることだった。

 ジアはさんざん拒絶されたが、面白いのは、思ったよりはるかに多く「イエス」と言われたことだ。実験の3日目、クリスピー・クリーム・ドーナツに行って、オリンピックの五輪マークのようにつながったドーナツを作ってくれと頼んだ。担当の女性が「はい」と答えて誇らしげにドーナツを運んできたとき、ジアは泣きそうになった。彼女のやさしさに感動したのだった。

 ジアの要求には応えられなくても、代わりに何かを与えようとする人も多かった。それで、ジアはこう考えた。拒絶されるのを恐れ、求めることをせずに生きてきたせいで、これまで自分はどれほど損をしてきたのかと。それは結局のところ、最初から自分に「ノー」と言っているのと同じだとジアは悟った。

 恐れをハックするために、ジアは失敗を祝うことを勧めている。用心深く安全なことだけしていれば、拒絶されることも失敗することもないが、そんなことに意味があるだろうか。失敗するほど大胆なことに挑む意思があるならば、そのことを祝おう。そのこと自体がすでに大きな達成なのだ。

(本原稿は、『シリコンバレー式超ライフハック』〈デイヴ・アスプリー著、栗原百代訳〉からの抜粋です)

デイヴ・アスプリー(Dave Asprey)
シリコンバレーのテクノロジー起業家、バイオハッカー。ブレットプルーフ360創業者兼CEO。シリコンバレー保健研究所会長。バイオハックの父と呼ばれる。ウォートン・スクールでMBAを取得後、シリコンバレーで成功するも肥満と体調不良に。その体験から、ITスキルを駆使して自らの体をバイオハック、世界トップクラスの脳科学者、生化学者、栄養士等の膨大な数の研究を総合し、自己実験に100万ドルを投じて心身の能力を向上させる方法を研究。自らもIQを上げ、50キロ痩せたその画期的なアプローチは、ニューヨーク・タイムズ、フォーブス、CNN、LAタイムズ等、数多くのメディアで話題に。ポッドキャスト「ブレットプルーフ・ラジオ」はウェブ界の最高権威、ウェビー賞を受賞するなど絶大な支持を誇る。著書に『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』『HEAD STRONGシリコンバレー式頭がよくなる全技術』(ともに栗原百代訳、ダイヤモンド社)など。

栗原百代(くりはら・ももよ)
1962年東京生まれ。翻訳家。早稲田大学第一文学部哲学科卒業。東京学芸大学教育学修士課程修了。訳書に『相性のよしあしはフェロモンが決める』(草思社)、『レイチェル・ゾー・LA・スタイル・AtoZ』(メディアパル)、『啓蒙思想2.0』『反逆の神話』『資本主義が嫌いな人のための経済学』(NTT出版)、『しまった!』(講談社)など。