損益分岐点は9割超
売上高が1割減少で営業赤字に転落

 休業時に重くのしかかる家賃についても、大手と中小以下の飲食店では格差がある。

「コロナ禍で、家賃の減額や支払い猶予を要求して実現できるのは、交渉力のある大手。不動産会社としては、中小や個人店はコロナを契機に追い出して、優良テナントに入れ替えたい思惑もある」と業界関係者は指摘する。

 2点目が、損益分岐点の高さだ。損益分岐点とは、売上高と費用が一致する箇所、つまり黒字になるか赤字になるかが分かれる点を指す指標だ。帝国データバンクの調べによれば、飲食店の固定費比率は平均62.1%で、固定費比率の高さが損益分岐点を押し上げているといえる。

 いちよし経済研究所の鮫島誠一郎氏によれば、主要上場外食企業75社の損益分岐点は平均で91%となっている。これは売上高が10%以上落ちれば、営業赤字に転落する企業が上場企業の約半数を占めていることを表す。

 小さな個人店の状況はより深刻だ。日本政策金融公庫の統計によれば、「一般飲食店」の損益分岐点は平均で103.5%となっており、費用が売上高を上回っている。

 節税対策として意図的に赤字にするケースが含まれるものの、コロナ禍以前から赤字を垂れ流している事業者が多数を占めるのが実情だ。このうち黒字かつ自己資本がプラスの事業者に限ってみても、損益分岐点は97.3%で、売上高がわずか3%落ちただけでも営業赤字になる計算だ。

 損益分岐点の高さは、廃業率にも表れる。5年以内の廃業率が全業種で10.2%であるのに対して、「飲食店、宿泊業」は18.9%と2倍弱で、全業種の中で最も高い水準だ(日本政策金融公庫調べ)。「調査の対象は事業計画などが認められ審査が通り、融資を受けることができた企業。自己資金で開業といったケースが含まれないため、実際の廃業率よりも低めに出る」(担当者)という。

苦境はこれから
倒産・廃業のラッシュが迫る

 緊急事態宣言は解除されたものの、ソーシャルディスタンスや「3密」を避けるといったことが飲食店には求められている。それ故、客席を間引くなどの対応策を迫られているが、客数の減少は営業赤字に直結する。倒産・廃業の増加はこれからますます本格化するといえよう。

 政府は、家賃や人件費の補償で飲食店の支援を行うが、「実際のところすずめの涙にもなっていない」と前出の業界関係者は言う。

 飲食店専門の財務支援会社ビーワンフードの広瀬好伸氏は、「通常時の売り上げへの戻りは遅いと想定されている。借り入れが膨らんでいることもあり、会社はつぶれやすくなっている状況だ。借り入れの返済をやめることをはじめ、今後も融資や借り入れがしやすい制度を整えるべきだ」と必要な施策を力説する。

 別の飲食店経営者は「今は、カジノで負けているときと同じ気持ち。ここでやめたら損害は最小限で済むかもしれないが、その決断をするのは難しい。借り入れを増やして事業がうまくいけばよいが、失敗すれば借金まみれとなって廃業することになる。何が正解か分からない」と苦しい胸の内を明かす。経済活動が再開へと歩みを進める中、飲食店の苦境は“これから”始まる。

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