「人生を変えるのに、最も効果的なライフハックとは何だろう?」と、デイヴ・アスプリー氏はこれまで20年近くかけて、シリコンバレーの最新のラボからチベットの修道院まで、世界中のあらゆる場所に足を運んで、体当たりの自己実験で研究してきた。
さらに、脳科学、生理学、東洋哲学、心理学といった分野の専門家の他、アスリート、医師、ライフハックの達人まで、400人以上の研究者や成功者たちに、「最も重要な3つのことをあげてほしい」と取材を重ねてきた。
そんな探求の果てにつかんだ答えを「脳」「休息」「快楽」「睡眠」「運動」「食事」「幸福」「人間関係」等の分野に体系化、1冊の「究極のハック集」にまとめたのが『シリコンバレー式超ライフハック』(デイヴ・アスプリー著、栗原百代訳)だ。
著者自身、「20年前にこの本に載っていることを知っていたら、どんなに人生が違っていただろう」という衝撃的なハックが目白押しの本書から、一部を特別に公開する。

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「筋肉量」と「筋力」が加齢を防ぐ

 チャールズ・ポリキンは、僕が「バイオハッカー」という用語を定着させるはるか以前から、この分野の草分け的存在として活躍している。世界的に名高いストレングス&コンディショニングの指導者でありコーチであり、17種ものスポーツで世界最高レベルのアスリートを助け、数百ものメダルと勝利と自己ベストを達成させてきた実力者だ。

 チャールズは数十年間にわたって、筋肉に送られるシグナルが身体をどのように変えるかを調べてきた。自分が出した結論について、だれが何を言おうと意に介さない信念の人だ。ほかの人が気づく何年も前に先を見ることのできるビジョナリーでもある。だからこそ多くのプロたちがチャールズのもとにやってくる。(中略)

 チャールズは、1980年代にタフツ大学で行われた、加齢を引き起こす要因を調べた一連の研究について教えてくれた。その研究で明らかになったのは、加齢の最重要のパラメータは「筋肉量」、次に重要なのは「筋力」ということだった。

 この2つの値は、コレステロール値、血圧、安静時心拍数、最大心拍数などよりも健康的な加齢のために重要であることがわかった。

筋力を強化して「炎症」と「酸化ストレス」を減少させる

 現実問題として、筋肉量の減少は30歳から始まって、10年ごとに3~5%が失われていく。この退行性の筋肉減少は「サルコペニア」と呼ばれ、ほぼ避けて通れないが、逆転させることはできる。動作トレーニングとウエイト・トレーニングを組み合わせて筋肉と神経系を刺激することで、加齢プロセスの進行を遅らせながら、失われた筋肉を再建し、筋力を強化し、炎症と酸化ストレスを減少させ、骨を強くすることができる。なんとも割のいい話ではないか!

「常習的有酸素運動」の落とし穴

 健康とフィットネスの専門家で、『身体の青写真』(未邦訳)というベストセラー本の著者のマーク・シソンは、10年以上前に「常習的有酸素運動」という言葉をつくった。持久性アスリートの多くが行っている、最大心拍数の約75~80%での長時間運動を長期にわたって続けるようなトレーニングのことだ。

 マーク自身、そんなトレーニングを続けてきた。長距離走者で、トライアスリートで、アイアンマンレースにも出場していたマークは、大量の炭水化物を摂取して持久性スポーツに邁進していた。だが、この炎症性食品とオーバートレーニングの組み合わせのせいで変形性関節炎と過敏性腸症候群を患い、アスリートとしてのキャリアが断たれた。

 コーチになったマークは、担当する選手たちが以前の自分と同じ問題を抱えていることに気づいた。彼らもまた長期間厳しいトレーニングをしながら、求める結果を得られずに苦しんでいた。

週1回、「全速力」で走る

 マークはトレーニング過多にならず持久力を改善する方法を模索し、有効な方法を見つけた。低強度の運動で身体をたくさん動かし、ときどきウエイト・トレーニングを加え、週1回全速力で走る、というのがその方法だ。マークによれば、持久力の訓練で肝心なのは、低強度のトレーニングと、たまに全力の本当にハードなトレーニングを組み合わせることだ。

 それが僕たちの先祖の動き方だった。大昔の人間は一度に1時間以上も走るようなことはなかったが、つねに低強度の活動を行って脂肪を燃やしていた。全力で動くのは、生命の危機に瀕したときか、食料を求めて獲物を追いかけるときくらいだった。

 このようなパターンを現代に再現することは難しい。マークが勧めるのは、30分~1時間の低強度もしくは中強度の有酸素運動──早足のウォーキング、ハイキング、自転車こぎ──を行うことだ。毎日する必要はないが、少なくとも週に2~3回することが大切だ。

 この種の運動の目標は、脂肪を燃焼させる心拍数を保つことである。身体を鍛えている人ならば最大心拍数の70~80%になるかもしれないが、たいていの人ならば60~70%で十分だ。それが脂肪を減らし、毛細血管を増やし、血圧を下げ、心臓病などの変性疾患の発症リスクを抑えるのに有効な、理想的なレベルの活動だ。効果はかなり低強度の運動でも現れはじめ、毎日わずか20分ほどの早歩きでも効果がある。

 マークはこのルーティンに週1~2日、無酸素インターバル・ワークアウト〔無酸素運動と休憩をくり返すトレーニング〕を加えることも勧めている。荷重のかかる無酸素運動が筋肉の増強に最適なトレーニングであり、「除脂肪筋肉量」を増やすことが炎症を低減して全身を健康にするうえで重要だと指摘する。この種のトレーニングは有酸素容量を高め、自然な成長ホルモンの生成も増大させ、インスリン感受性も向上させる。