2月、3月にかけて大きく下落した株価は、4月、5月を経て徐々に戻し、6月はやや頭打ちという展開が続いています。
マーケットは恐らく、アフターコロナの世界で生き残れる企業の選別を始めているようです。
どういう企業が、どういう業種が生き残れるのか。『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(ダイヤモンド社)をダイヤモンド社より刊行した農林中金バリューインベストメンツ株式会社常務取締役CIOの奥野一成氏と、グロースキャピタルを運営するシニフィアン株式会社共同代表の朝倉祐介氏が、アフターコロナの投資について語ります。
対談は、ESG投資、AI投資、アクティブ運用の本質へと広がっていきました。これから求められる投資の形とはどういうものなのでしょうか。(撮影/高須力 構成/鈴木雅光)
コロナショックで広がった貧富の差
奥野 経済全体に目を向けると、気になる点が2つあります。前編でも触れましたが、いくらリモートワークの体制が出来たとしても、人の動きが全く無くなるようなことにはならないでしょう。経済は徐々に元の世界を取り戻しに行くとは思うのですが、気になる第1点目は、貧富の差です。間違いなく拡大のペースが加速したのではないでしょうか。国内を見れば、飲食関係を中心にして非常に厳しい状況に追い込まれている一方、金融業界はほぼ何の影響も受けずにいます。社会の不安定要素は大きくなったと思います。それを受けて社会の分断がここかしこで生じています。お金を持った高齢者はステイホームできますが、お金の無い若者は働かなければ食べていけませんから、ステイホームなんて言われても無理です。そして、それと同じことが国単位でも起こりつつあります。お金を持っている先進国はステイホームできますが、新興国は経済が止まり続けたら死んでしまう。とはいえ目下、先進国と新興国の間の経済活動・交流がストップしていますから、新興国はますます苦境に立たされることになる。新興国経済が死んでしまったら、世界経済の成長が無くなるかも知れません。この点を非常に危惧します。
朝倉 確かに今回のコロナショックは、リーマンショックとは違って金融危機が起点ではありません。もちろんこの先、実体経済が一段と厳しくなれば、金融危機を引き起こす恐れもあるので、そこは注意して見ておく必要はありますが、どうもファンダメンタルズとマーケットの動きが乖離しているようにも見受けられます。
奥野 世界中の中央銀行が金融緩和によってお金をばら撒いたので、底割れはしにくいと思います。でも、今は新興国経済を切り離した状態ですから、世界経済がこれまでと同じように成長し続けられるかという点を問われれば、よく分からないとしか言いようがありません。
シニフィアン株式会社共同代表
マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィへの売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。株式会社セプテーニ・ホールディングス社外取締役。2017年、シニフィアン株式会社を設立、現任。著書に、『論語と算盤と私』『ファイナンス思考』(ダイヤモンド社)など。