ツール(1)「箇条書き」(Bullet point)

 何かを洗い出すときに有効なのが、「箇条書き」です。ホワイトボードに書き出したり、ポストイットにどんどん書いて貼り出したりします。先にコラムで、低文脈では頭の中が図解化できているかが大切だと話しましたが、まさに、このホワイトボードは参加者全員の考えていることを図解化・可視化していく重要なツールです。

 日本人同士であれば必要なくても、言語や文化の違う人が集まるグローバル環境で「誰もが活躍できる」環境を築くには、「誰にとってもわかりやすい状態」を作ることが不可欠なのです。

 私が総合商社に勤めていた頃、会議に挑むときは必ず、ホワイトボードの近くに陣取っていました。その理由はいろいろありますが、第一に、話し合っていることを可視化したかったからです。工場や現場などホワイトボードがないところでも、必ずクリップボードとノートを持ち歩きました。

 1つ1つ書き出すことのメリットは、情報が一目瞭然となり、共有しやすくなることです。また、ホワイトボードという「公式なメディア」ができると、人の意識が自然とそこに集中し、話があちこちそれないという利点もあります。最初の方で話したことが目に見える形で残っているので、何か疑問が出れば、すぐそこに立ち返ることもできます。

 しかも、ホワイトボード係を買って出ることで、あたかも議論を仕切っているかのような効果も出てきます。皆、自分の意見を書き留めてほしいので、係に向かって意見を言うようになるからです。しかも、理解できるようにはっきりゆっくり話してくれたりします。英語が苦手だからこそ、ホワイトボードを制するメリットは大きいのです。

 また、書き留める際に、出てきた意見を褒め、何でも言っていい雰囲気、チャレンジングな意見も出せる空気を醸成すると、場がぐっと盛り上がります。あたかも名ファシリテーターのように振る舞うことができるのです。

・どんどん褒める

 特に賛同しているわけではなくても、出してくれてありがとうと素直に感謝しましょう。「賛成すること」と「良いと思うこと」はまったく別物です。賛同できない意見でも、「一理ある」「そういう考えもある」という意見であれば、いいところを見つけ出してきちんと褒めることが大切です。意見が出れば出るほど、最適な解決策につながる可能性が高まるからです。

 I like that idea.
 →いいアイデアですね(反対意見でも、良い意見はどんどん褒める )
 That’s a very good point!
 →それはいいポイントですね

・すかさず書き記す

 ホワイトボードに書き出す際、皆に背を向けて黙々と書くのでは、単なる書記に成り下がってしまいます。極力メンバーに体を向けたまま、アイコンタクトを頻繁に行ない、褒めたり、「Right」(なるほど)と相づちを打ったり、絶えず言葉のやり取りをしながら書き出していきましょう。

 Let me write that down.
 →それ書いておきますね
 Let me put that down on the board.
 →ホワイトボードに書きましょう

・さらに意見を募る

 Any other thoughts? →他に考えはありませんか?
 Any other ideas? →他にアイデアはありませんか?
 Any other opinions? →他に意見はありませんか?
 Anyone else? →他に誰か?

・聞き取りにくいときにもう一度言ってもらう

 Can you repeat that please?
 →もう一度リピートして頂けませんか?(せっかくの意見。勇気を出して聞き返す )
 Can you say that one more time?
 →もう一度言って頂けませんか?
 Come again?
 →もう一度よろしいですか?
 What was that?
 →何と言われましたか?

 いったん意見やアイデアを吐き出し尽くしたら、似たものをグルーピングしたり、抜けている点を洗い出したりして、問題に対する理解を深めていきましょう。

 次回は引き続き、問題が発生しているメカニズムを洗い出すための、2つ目のツールを紹介します。因果関係、いわゆるロジックツリーを利用するものです。お楽しみに。

トラブルシューティングは最初の質問が肝心
児玉教仁(こだま・のりひと)
イングリッシュブートキャンプ株式会社代表
ハーバード経営大学院 ジャパン・アドバイザリー・ボードメンバー
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー アドバイザー
静岡県出身。静岡県立清水東高等学校を卒業後、1年半アルバイトで学費を稼ぎ渡米。ウィリアム・アンド・メアリー大学を経済学・政治学のダブル専攻で卒業後は、シアトルでヘリコプターの免許を取得後帰国。1997年4月三菱商事株式会社入社。鉄鋼輸出部門に配属され様々な海外プロジェクトに携わる。2004年より、ハーバード経営大学院に留学。2006年同校よりMBA(経営学修士)を取得。三菱商事に帰任後は、米国に拠点を持つ子会社を立ち上げ代表取締役として経営。2011年同社を退社後、グローバル・リーダーの育成を担うグローバル・アストロラインズ社を立ち上げる。2012年よりイングリッシュブートキャンプを主宰。イングリッシュブートキャンプ社代表も務めるかたわら、大手総合商社各社をはじめ、全日本空輸、ダイキン等、様々な国際企業でグローバル・リーダー育成の講師としてプログラムの開発・自らも登壇している。