優秀なマネジャーを採用する最強の方法は、M&A(十河)

起業家が事業家へと脱皮する過程で、<br />必ずやらなければいけない<br />たった1つのこととは?十河宏輔(そごう・こうすけ)
AnyMind Group共同創業者兼CEO
1987年香川県出まれ。日本大学商学部卒業。2010年株式会社マイクロアドに新卒入社。入社まもなく社内での単月個人粗利史上最高額を更新。2011年4月子会社株式会社マイクロアドプラス立ち上げに参画。ユニットリーダーに就任し、設立初月黒字化に貢献。2012年6月マイクロアドのベトナム法人CEOに就任。2013年6月マイクロアドのシンガポールにある東南アジア営業統括会社MicroAdSEAのCOOに就任。その後もフィリピン、タイ、インドネシア、マレーシアで法人立ち上げに参画。2016年4月にAdAsia Holdings Pte. Ltd を設立し、CEO&Founderとしてアジアの広告業界において爆速で成長中。2018年1月にAdAsiaの親会社をAnyMind Groupに改称。Forbes「日本の起業家ランキング2020」で創業最短・最年少でTOP20に選出。

田所 十河さんとは去年対談していますけど、最初の立ち上げの頃から、自分が成長のボトルネックにならないようにする、みたいな意識はあったのですか?

十河 そうですね。僕も結構自分でゼロイチをやってきたんですよね。

田所 マイクロアド(前職)の時代から?

十河 前職時代もそうですし、起業してからもゼロイチをやっていました。一方で海外展開を進めていく中で、どうしても自分で全部コントロールできなくなっちゃう限界がきますよね。もう国がそれぞれ違うので。

田所 今、何ヵ国でやっているのですか?

十河 13ヵ国です。

平田 そんなに多いのですか。

十河 結局、国が違うので、どうしても現地の信頼できるローカルのヘッドを採らないと業務が回らないんですよね。ベトナムだったら絶対にベトナムの超優秀な人を採らないとダメだという…。

平田 商習慣が全然違うから、自分で全部理解しようと思っても限界がありますよね。

十河 そうですね。英語でコミュニケーションはとれるんですけど、ベトナム語はしゃべれないので。どうしても普段の業務ってベトナム語になりますよね。要は、社内のドキュメントは英語で、僕らが行ったらみんな英語でコミュニケーションとりますけど、たわいもない会話は、みんなベトナム語でしゃべっているので…。ただ、そうしたたわいもない雑談の中に、事業のヒントとかってあったりするじゃないですか。そこをやっぱりつかめないなという感覚がもともとあったので、それで、各国でしっかりと現地の優秀な人を採用しようと決めました。

田所 僕の友人が東南アジアに投資していましたけど、やっぱりミドルマネジャーの採用がすごくむずかしいと言っていました。その辺はどういうふうにして13ヵ国で優秀な人を採用できているのですか? 何かコツみたいなものって?

十河 やっぱり、最強なのはM&Aですよね。要は、社長を採用できるから。複数社のM&Aをやっているんですけど、香港とタイの会社が良かったのって、買収先の社長を雇えたことですね。アントレプレナーで、経営能力も高くて、マネジメントできるタイプです。M&Aを通じて彼らを採用できた。このM&Aを通じて社長を採用する戦略みたいなのは、とても功を奏している感じがします。

田所 ただ、どうしても起業家気質ってあると思うのですが、やっぱりオーナーシップを渡すことに対して抵抗があるというか、その辺はどういうふうに口説いたりするのですか?

十河 そこは、とても重要なポイントなんですが、一部株式交換を使いAnyMind Groupの株を持ってもらっています。そのうえで、例えば、タイ一国のインターネット広告事業だとして、タイではそこそこやっているけど、グローバルでどこまでできるのかっていうところを話します。うちの船に一緒に乗ってやったほうがもっと面白いことできるんじゃないかという。

田所 なるほど、そうですね。

十河 タイや香港である程度、稼いでいるよりも、うちの船に乗ってグローバルでインパクトのあることをやっていくほうが面白い、エキサイティングなんじゃないか、みたいなことを言うわけです。そこをうまくコミュニケーションをとりながら、そこのすり合わせをディールの前にやっていくっていうのが、すごく大事かなと。

平田 M&Aはあらかじめリサーチして、狙っていくんですか?

十河 もう完全に狙いますよ。

田所 それは、FA(財務アドバイザー)を使わずに、自分たちだけで準備してやる?

十河 こういうジャンルのこういう会社を買収したいなっていうのがある程度、自分の頭の中にあるので、リサーチも含めてできることは自分たちで全部やります。そこの事業を、うちのプラットフォームとかテックを活用すれば、さらに生産性が上がって、そこの事業も業績伸びるなと。逆にそこのファウンダーが優秀だったら、うちの拠点も一緒に見てもらえるな、みたいな。

田所 それって、頭の中でたぶんas isの現状が市場軸とプロダクト軸とであって、メッシュ状になっていて、そのオセロの四隅を全部取るには、まだここが足りてないから、じゃあ、ここをどうにかしてM&Aしたいなという感じですか?

十河 おっしゃるとおりですね。

平田 いいですね。僕らは、そういう競合がローカルにいないのですよね。同じマーケティング領域で、広告寄りのパーチェスファネルマーケティングツールではなく、CRM寄りのエンゲージメントマーケティングのツールということもあり、ローカルにはそういうプレーヤーがいないのです。

田所 それはアジアの?

平田 そうです。今、シンガポールに進出して戦っているのは、僕らが5年前からベンチマークしている欧米のすごく強い会社なんですけど、買収どころか、僕らの2倍ぐらいの企業価値があったりします。広告領域とちょっと違うのは、かなりの提案営業というか、ソリューション営業をしないといけない領域でもあるんです。お客さんのジャーニーを読みながら、「こういうマーケティングシナリオを描いてやったら、もっとロイヤルカスタマーが増えますよ」みたいなことをやっています。だから、商談リードタイムも平均3.5ヵ月とか、結構かかります。

十河 結構長いですね。

平田 そうですね。その分、1件取れると結構売上が積めますけど。