この経験は、私にとって素晴らしい経験でした。新しい概念を受け取ったり、それに対して自分が何かしら理解したりすることは、とても貴重でかけがえのないことだという感覚が芽生えましたし、それは時間とともに消えてしまうという危機感も持てるようになりました。だからこそ今自分の頭の中にあることを形として残したい、という強い欲求が生まれたのです。そして、さらにそれに自分なりに調べたことを付記すれば、ノートは自分にとって宝物に思えるのでした。
ノートを作ると「教える」ことを経験できる
前節で、学ぶということは「聞く→考える→教える」の3段階で成熟するのだというお話をしましたが、自分で上記のような「宝物」ノートを作ることは、第2ステップの「考える」はもちろん、今わかっていることをできるだけ丁寧に、わかりやすく未来の自分に教えてあげるという第3ステップをも経験することができる、とても魅力的な勉強法なのです。
それがわかってからというもの、私は物理に限らず、他の教科についても「宝物」ノートを作るようになりました。さすがに学校でノートを取らずにいると「何をぼーっとしているんだ!」と怒られそうなのでとりあえずノートは取っていましたが(いや、取らないことも多かったかな?)、家に帰って授業の内容と新たに自分で調べてわかったこと、また疑問に思ったけれどすぐには解決できないことなどを、見やすく(字は汚かったですが)まとめるようになりました。これが本当に勉強になりました。
しかも、この行為は自分でノートを「作る」という能動的な勉強なので、とても楽しかったのをよく覚えています。前にも書きましたが、私はさらに架空の生徒に対して、自室で「授業」をしていましたので、このノートはその「授業ノート」としても活躍しました。
「宝物」ノートの作り方
「宝物」ノートは大きく[定理・公式編]と[問題編]に分かれます。ただし、2冊のノートに分ける必要はありません。1冊のノートに適宜どちらかをまとめていきます。それでは具体的にその作り方をみていきましょう。