誰もが「理想」を実現することに
喜びを感じる
また、このような経験を積むことで、どんなに立派な「理想」や「ビジョン」を掲げても、周囲の人々の「共感」と「協力」を得られなければ、何一つ実現しないことを、骨身にしみて理解できることも重要です。
この連載で繰り返し述べているように、参謀は、経営層が掲げる「ビジョン」を実現すべく、バックキャスティング(ゴールから逆算すること)で設定された「戦略」を、現場に浸透させ、それを実行してもらううえで重要な役割を担いますが、ここで難しいのは、現場の人々の「共感」や「協力」を引き出すことです。これに失敗すれば、「戦略」を現場に押し付けるほかなくなり、その結果、改革そのものが形骸化していくことになりかねません。
そのような事態を招かないためには、参謀自身が、「理想」や「ビジョン」を実現するために、周囲の人々と力を合わせることが「心の底から楽しいことである」と、深く実感するような経験をしておくことが重要です。
これは、まったく難しいことではありません。人間は誰だって、「こんなふうになったらいいな」という願望をもっていますから、正しい「理想」「ビジョン」を掲げ、みんなの「共感」と「協力」を得る努力をすれば、周囲の人々はみんな、喜んで力を貸してくれます。それに感謝しながら、みんなと楽しくモノゴトを前に進めていけばいいだけのこと。その感覚を磨いておくことこそが、参謀力を高めることなのです。