大学受験の最難関である東大理三に、4人のお子さん全員を合格させた佐藤亮子さん。2015年の秋に佐藤さんにお会いして以来、取材や講演などで軽く100回以上お話を伺った。驚くのは話の引き出しの多さだ。
今までに幼児教育の重要性、中学受験や大学受験のサポート方法、子育て論などについてたくさんお話を伺ったが、新著『東大理三に3男1女を合格させた母親が教える 東大に入るお金と時間の使い方』は「お金と時間」という新しい切り口。「佐藤さんはどのようにお金と時間を使ったか」に加え、子どもの学力を伸ばすためのさまざまな佐藤ママメソッドが紹介されている。
第一子であるご長男を授かった時、佐藤さんは「子どもの未来の可能性を拓くために重要なのは教育。本人が希望する道に進めるよう、能力を最大限に伸ばしてあげたい」と思ったという。ご長男が生まれる前から小学校の教科書に目を通し、童謡集を購入するなどの準備を始めた佐藤さんは、教育費は惜しまず、時間の無駄を省いてきた。
わが子の幸せな未来のために学力を伸ばしたい、わが子を東大に入れたいと考える方はもちろんのこと、社会人や専業主婦にとっても役に立つ情報が満載だ。5回に分けて、佐藤さんの魅力、独自の子育て、書籍の特徴などについて紹介したい。(教育ジャーナリスト 庄村敦子)

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 佐藤亮子さんに初めてお会いしたのは2015年秋。中学受験塾・浜学園の講演会だった。

 当時、佐藤さんの子育てを批判する意見もあって、お会いするときには少し緊張したが、講演会のお話はわかりやすく、はっきりとした話し方は聴いていて心地よかった。お子さんたちの爆笑エピソードを本当に楽しそうに、笑いながら語る佐藤さんの笑顔が素敵で、「お子さんたちのことが大好きで、全力でサポートしてきた」ことがよくわかった。

 保護者の方々は一生懸命にメモを取り、講演後には熱心に質問していた。中学受験のサポートとして、子どもの勉強の計画を立てる話を聞くと、「私もやっていたなぁ」と懐かしく思い出す一方で、数種類の手作りノートの話などには、「そこまでされたんだ。すごい!」とひたすら感心。

 講演が終わり、控室で挨拶をしたときに、「父の転勤で、子どもの頃に大分市に2年間住んでいたこと」を伝えた。2年間だが、同じ市に住んでいたのだ。また、「私の長女は佐藤さんのご長男と同じ1991年生まれで、中学受験をした」ことも話した。

 その後、佐藤さんの取材が終わった後に雑談を繰り返すうちに、さまざまな共通点がわかり、さらに親近感を覚えた。

・県立高校から東京の私立大学に進学
・佐藤さんのご長男と私の長女の誕生日がほぼ1ヵ月違い
・第一子出産の頃、「うつぶせ寝」が流行していたが、危険だと思って仰向けで寝させた
・佐藤さんのお嬢さんと私の次女の誕生日が1日違い
・母親が生まれた年が同じで、幼い頃に母親からよく童謡を歌ってもらっていた

 読書をはじめ、同じ趣味もいくつかあった。私が長女と次女を出産する間に、佐藤さんは2人の息子さんをご出産。私の場合、働きながらの子育てだったとはいえ、4人のお子さんを大学受験まで全力でサポートした佐藤さんのお話を伺うたびに、反省することが多かった。

 出会ったとき、佐藤さんも私も高校2年生の娘の母親だったため、高3の夏休みには、エールを送り合った。そのときに「お嬢さんと喧嘩して、2日ほど口をきかなかった」ことを知ったが、そのときには「お嬢様は、有名なお母様と東大医学部のお兄様を持ち、プレッシャーを感じているのかもしれませんね」と、喧嘩の理由を根掘り葉掘り聞くことは一切しなかった。

 お嬢さんが東大理三に合格した日の夕方の取材で、「以前、お話されていた夏休みの喧嘩について伺っていいですか」と尋ねて、詳細を聞いた。

 原因は通っていた大学受験塾・鉄緑会の夏期講習の受講について。3人の息子さんと同じように、「夏期講習を受けずに自宅で東大模試の過去問を解く」ことを勧める佐藤さんに対して、お嬢さんは「夏期講習に行きたい」と主張し、親子喧嘩に発展。

 佐藤さんが、東京で一緒に住んでいた息子さんたちに電話をかけて相談。息子さんたちはお嬢さんに、「今は腹が立つかもしれないけど、ママのいうことを素直に聞いた方がいいよ」とアドバイス。その一方で、佐藤さんに「2日だけ夏期講習に行かせる」という折衷案を提案。結局、佐藤さんもお嬢さんもその案を受け入れたという。

 その話を聞いたときには、家族の仲の良さを感じた。

 佐藤さんのお嬢さんは、高3のとき、入浴と髪を乾かすのに1時間20分ぐらいかけていたという。このため、高3の10月頃から佐藤さんが業務用のドライヤーで髪を乾かしてあげて、その間に、お嬢さんは英単語や古文の単語をチェック。高3の12月頃からは一緒にお風呂に入り、髪や背中を洗ってあげると、「洗ってもらうと楽~。私のためにここまでやってくれてありがとう」と感謝してもらったという。

 その話を伺った後、次女にちょっとおどけて、「髪を洗って、乾かしてあげようか」と言ってみた。次女の返事がわかっていて聞いたのだが、「いいよ、自分でできるから」。思った通りの返事だった(笑)。

 私の次女が小1のときに、帰宅時間を電話で伝えると、その時間に合わせて、ほかほかのおにぎりを作ってくれたことがあった。お子さんを全力でサポートしていた佐藤さんとは逆で、子どもにサポートしてもらっていた私。ちっちゃな手で握ってくれたおにぎりで、心も体も温まった。あのときの味と感動は今も鮮明に覚えている。

 私は出張で家を空けることもあったし、夜遅くまで原稿を書くことも多い。やはり、佐藤さんのようにお子さんが幼いときからいつも一緒にいて、高3までずっと寄り添ってサポートを続けていたからこそ、できるのだ。

 ある講演会の質疑応答のときに、「佐藤さんのように、高3の娘と一緒にお風呂に入り、髪を乾かしてあげたいのですが、娘が嫌がります」という質問があった。数々の佐藤ママメソッドがあるが、すべてやるのは難しいだろう。

 子育ては悩むことが多く、試行錯誤の連続だ。佐藤さんも、ご長男を幼児教室に通わせたいと思ったとき、調べれば調べるほど、どこにすればいいか迷った。

 そんなとき、御主人がかけた言葉が、「いいとこどりするつもりで、とりあえず気楽に気に入ったことをやらせてみたら?」。その言葉を聞いて、気持ちが楽になった佐藤さんは、「やる前から心配しても仕方ない。『一番いい』と感じたところでとりあえずやってみよう」と思い、公文式教室に通わせることにしたという。

 佐藤さんの子育ての素晴らしいところは、お子さんに合わせて、サポート方法を変えていること。第5回で詳述するが、お子さんたちは性格や好み、苦手分野などが違ったからだ。

 また、大学受験では、次男さん、三男さん、お嬢さんには勉強のサポートをされたが、ご長男は自分で計画を立て、自分で勉強するタイプだったため、任せていたという。

 佐藤さんがご長男を授かった時の子育ての最終目標は、「わが子が自分でお金を稼いで、自分の力でしっかり生活できる人間に育てること」。

 現在、佐藤さんの3人の息子さんたちは医師になり、私の長女はコンピュータ関係の仕事をしている

 長女はコロナ禍の現在、自宅でテレワークをしているが、「楽しく」働いていることは、母親としてこのうえない喜びだ。エクセルの使い方がよくわからないときには教えてもらい、助かっている。

 次女は幼い時に『ブラック・ジャック』を全巻読んで以来、医師に憧れていた。現在は医学部で医学の勉強に打ち込んでいる。

 子育てにはお金も時間もかかるが、お金と時間の使い方がわが子の将来を決めると言っても、過言ではない。『東大理三に3男1女を合格させた母親が教える 東大に入るお金と時間の使い方』には、お金と時間に関するさまざまなメソッドやアドバイスが紹介されている。ただ、自由になるお金と時間はそれぞれ違うのだから、無理なくやればいいと思う。

 佐藤さん流に言えば、「迷っているのは時間の無駄」だから、「いいな」「実践してみたい」と思うものを、「いいとこどりでとりあえず」やってみるといいだろう。

 最後に、取材で4人のお子さんたちと電話で話した時のことをお話したい。3人の息子さんたちの感謝の言葉は第4回で詳述するので、今回はお嬢さんの言葉を紹介しよう。

「絵本を読み聞かせてもらい、童謡を歌ってもらった幼い頃、家族でトランプをして遊んだ日々、家族との会話など、日常生活のすべてが楽しかった。家族の誕生日にはみんなでお祝いしました。奈良での日々を振り返ると、幸せな18年だったなぁと思います」

 この言葉を聞いたとき、涙もろい私は胸が熱くなり、泣きそうになった。もちろん、息子さんたちの感謝の言葉を聞いたときにも感動した。

 お子さん全員が「東大理三合格」という快挙が注目されるが、4人とも礼儀正しく、好感を持てるお子さんたちだった。『東大理三に3男1女を合格させた母親が教える 東大に入るお金と時間の使い方』を読めば、そのような子どもに育った理由がわかるだろう。