「一見それほどでもない症状でも、実は放っておくとこわい症状も少なくないのです。最初は気にもとめないわずかな症状が、放っておくと、取り返しがつかない大病になることもあります」。そう話すのは、テレビでも人気の総合内科専門医・秋津壽男氏だ。体からのSOSサインに気づかず、後悔することになってしまった方をこれまでたくさん見てきたという。秋津医師の新刊『放っておくとこわい症状大全~早期発見しないと後悔する病気のサインだけ集めました』は、まさにこうした病気で後悔する人を少しでも減らしたいという想いから生まれたものだ。9月16日に発売となった本書の内容を抜粋するかたちで、自分や家族の健康チェックに役立つ情報を紹介していく。

長生きしたいなら「マグネシウム」を積極的に摂りたい理由Photo: Adobe Stock

マグネシウム不足は、病気のリスクを高める

 ビタミンや鉄分に比べると、ふだん名前を聞く機会の少ない栄養素がマグネシウムです。「マグネシウムが大切」といわれてもピンと来ないでしょう。しかし実は、マグネシウムは生命の維持にとても重要な役割を担う栄養素です。不足すると大病を招く恐れがあります。

 マグネシウムは、体温や血圧、ホルモン分泌の調整、筋肉の収縮などを助け、体内にある300もの酵素の働きを保つ役割を担っています。不足すると筋肉や心臓の機能に影響が及び、それが不整脈として症状にあらわれたり、筋肉のけいれん(まぶたがピクピクするなど)としてあらわれたりします。

 さまざまな体内の調整にかかわるマグネシウムが不足し続けると、高血圧や心筋梗塞などの血管の病気、そして糖尿病などの生活習慣病にもなりやすくなるとされています。

 実際、国立がん研究センターと国立循環器病研究センターが共同で行った研究によると、マグネシウムを多く摂取している人は、心筋梗塞などを発症するリスクが3~4割低いということが明らかになっています。

 また、マグネシウムの50~60%は骨に吸収されて貯蔵されています。体のマグネシウムが足りなくなると、体は骨からマグネシウムを取り出して量を保ちます。このとき、骨にあるカルシウムも一緒に出ていってしまうため、骨がもろくなり、骨粗しょう症になる恐れもあります。

「豆腐」は理想的なマグネシウム補助食品

 マグネシウムは体内でつくることができないので、食べ物できちんと補う必要があります。また、ストレスでも減少するといわれているので、現代社会ではなおさら意識して摂取したいところです。マグネシウムが多く含まれるのは、わかめや昆布、あおさなどの海藻類や豆類、しらす干し、あさりといった魚介類です。

 とくに、にがりにもマグネシウムが含まれる豆腐は、理想的なマグネシウム補助食品といわれています。

 サプリメントでの摂取もよいですが、過剰にとりすぎると血中のマグネシウムが増えすぎる高マグネシウム血症を起こし、血圧低下をまねきます。にがりのとりすぎも下痢を起こすので注意してください。

(本原稿は、秋津壽男著『放っておくとこわい症状大全』からの抜粋です)

秋津壽男(あきつ・としお)

秋津医院院長
1954年和歌山県生まれ。1977年大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をし、和歌山県立医科大学医学部に入学。1986年に同大学を卒業後、循環器内科に入局。心臓カテーテル、ドップラー心エコー等を学ぶ。その後、東京労災病院等を経て、1998年に東京都品川区戸越銀座に秋津医院を開業。下町の一次医療を担う総合内科専門医として絶大な支持を集める。現在、「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系列)にレギュラー出演中。ベストセラーとなった『長生きするのはどっち?』『がんにならないのはどっち?』シリーズ(あさ出版)ほか、著書多数。新刊『放っておくとこわい症状大全』(ダイヤモンド社)が2020年9月16日に発売。