中堅ゼネコンの飛島建設は2017年以降、事業の多角化や新規事業の開拓のために地方企業を買収している。地方の仕事に将来の成長戦略を描く一方で、乘京正弘社長は全国規模の会社が地方を食い荒らすやり口に苦言を呈する。特集『ゼネコンの呪縛』(全20回)の#17では、乘京社長のインタビューをお届けする。(ダイヤモンド編集部 松野友美)
地方の庁舎建築の受注に
大手が顔を出してきている
――新型コロナウイルスの感染流行を受けて、建設業界の市況はどうなりますか。
これから企業の設備投資が低迷するのは仕方がないと思っています。ただ、「ニューノーマル」という形で恒久的に全てが変わってしまうとまでは考えていない。
確かに民間建築の仕事は、生産拠点を中心に、もともと受注が見えていたのに先送りになっているものもある。今後、新たな流通サプライチェーンの中で新規のお客さんが増え、これまで付き合いのあるお客さんでもオフィスだった所を倉庫に変えるなどして資産を生かす考え方になっていくと思う。
世の中の変化に早く対応するために、投資を拡大する企業もある。実際6月に、本社社屋や物流施設などの建設実績があるお客さんから、新たに物流施設の新設工事の仕事をもらった。
飛島建設(以下、飛島)はこれまで民間建築では、設計・施工から竣工後のアフターフォローまで一気通貫でするように進めてきた。そうすることで付き合いのあるお客さんのニーズに合った幅広い提案ができるようにしている。正しい方向に向かっていると思っています。
――コロナでゼネコンの競争環境に影響は?
地方の庁舎建築の受注には全部、大手ゼネコンが顔を出してきていると意識している。民間建築ならばもっと出てくると思う。モノ(工事)がなくなってきていますから。うちはおそらくやれないだろうけど、病院の工事なんかが出てきたら、得意なところがガーッと集まるんじゃないか。
――去年からこの夏までに何度か、地方庁舎の工事では大手のJV(共同企業体)と、飛島や中堅ゼネコンのJVなど複数社が近い入札金額で競っていました。中には、1社だけほかの応札者よりも10%以上低い金額で応札する大手もいました。
とても太刀打ちできない。われわれは原価を積み上げて、利益を確保できる金額で入札するしかない。額の大きな工事をぎりぎりの金額までたたいてしまったら、昔の(談合を取り締まった直後の)最低制限価格を狙って入札する会社が多発した過当競争と一緒になる。そんな状況にはしたくない。