そんな中でも、当初案の撤回で建設スケジュールが押せ押せになった国立競技場は、予定通り19年11月末に竣工してみせた。

 しかし、手いっぱいの状況下で想定外の事故まで起きた。19年6月下旬、大成が手掛ける熊本市の再開発複合施設「SAKURA MACHI Kumamoto」の工事現場で火災事故が発生。工期が9月に迫った待ったなしの状況だったが、竣工は間に合わせた。

 結局、受注を詰め込んだためにやり切れなかったり、トラブル対応もあって不採算工事が出たりして、中計未達の判断に影響したとみられる。

 ゼネコンの逼迫は、下請けの専門工事業者(職人)にしわ寄せが及ぶ。受注時の採算性が悪いだけでなく、工事の遅れや工期の短さが原因で、下請けの中でも大きな規模の1次下請け業者でさえ赤字となったり、職人が時間に追われたりするケースは後を絶たない。

 これはゼネコン業界全体にかねてはびこる問題だが、現場のゼネコン社員の振る舞いに左右される部分も大きい。とりわけ「大成」の名を挙げると、職人は怒りと涙があふれる“最悪の現場”として有名な「丸の内3-2計画」(現丸の内二重橋ビルディング)の記憶が呼び覚まされるという。

「3-2」は、猛暑でエアコンがない中、工程の遅れで職人が長時間働かされ、大成社員によるどう喝もあったとして、職人の間で悪評が広がっているのだ。この現場を経験した職人によると、最近、都心の大型現場でまた大成の名が話題に上っているという。

 三菱地所が23年度の竣工を目指し、高層ビルとして日本一の高さとなる常盤橋トーチタワーの工事は、下馬評で大成が受注するといわれている。まだ入札は行われていないが、「大成になったら『3-2』と同じ支店の管轄なので、あのときの大成社員が担当するかもしれないと、下請けたちは心配している」(職人)という。

 大成社員による下請けの扱いのひどさや、赤字工事に付き合わされて泣かされたという負の側面は、コロナへの対応にも表れていた。