また、22日間現場作業を止めたにもかかわらず、9月末までの工期は延長されなかったと下請け業者の間ではささやかれている。

 大成は「個別工事の事象については、回答を控える」と言うが、それでも職人たちにしわ寄せがあったことがうかがえる。

 職人の給与体系は日給月給制が多いため、現場が閉じて仕事がなくなれば、他の現場に移る。そのうちに感染が拡大しかねない。大成が感染の広がりを実際より小さく伝えることは、他の現場の職人を含めた安全をないがしろにしているとの誹りを免れない。

 ゼネコン業界では長らく、立場の強いゼネコンが下請け業者に無理を強いてきた。大成を見るに、その旧弊は変わっていない。想定外の事態で業績が狂うばかりでなく、陰で下請けが痛めつけられている。そこから目を背け続ければ、下請けのなり手はいなくなる。

(ダイヤモンド編集部 松野友美)