新型コロナウイルスの感染拡大で急速に広まった在宅勤務。しかし、在宅勤務では残業を認めない企業も少なくない。残業代で高年収を維持していたビジネスパーソンは転落の危機にある。特集『年収1000万円の大不幸』(全13回)の#10では、もともと残業時間が長く、残業代が減少するリスクの高い企業をランキングして探った。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
在宅勤務で残業代が出ない企業急増
将来の年金受給額に影響する可能性も
「在宅勤務では残業代は出ない」――。コロナ禍でこうした“お達し”を出す企業が相次いでいる。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、社員の感染リスク低減のため、大企業を中心に急速に広まった在宅勤務。社員にとっても、満員電車の苦痛から解放されて通勤時間を自分のために使えたり、育児や介護を仕事と両立させやすかったりするなどのメリットもあって好評だ。
ただその一方で、在宅勤務では残業代が出ないというケースが多発しているのだ。ある中堅の物流企業では、「在宅勤務では、時間管理ができない」との理由で残業は一律禁止になった。所定時間内に終わらなければ、当然ながら“サービス残業”を強いられる。
NPO法人労働相談カフェ東京の横川高幸氏は、「在宅勤務で残業が認められても『申請しにくい』という声が多数寄せられている。上司は管理能力が問われるため、部下が上司に“忖度”せざるを得ないケースもある」と語る。住宅ローンや生活費を残業代ありきで考えている世帯にとって、残業代を失う事態は大打撃である。
加えて、残業代の減少は、目先の収入減だけでなく、将来受け取る年金にまで影響が出る可能性もある。社会保険労務士の飯塚知世氏は、「在宅勤務によって残業代が減少し、この他にも通勤手当(定期券代)も廃止されれば、社会保険料算定の基礎となる等級(標準報酬月額)が下がり、年金の受給額が下がってしまう可能性がある」と指摘する。
高年収を残業代で維持していたビジネスパーソンにとって、今回のコロナ禍に伴う“働き方改革”は、思わぬ転落劇の始まりになりかねない。
残業時間が長く、収入減少リスクの高い企業はどこなのか。ダイヤモンド編集部では平均年収1000万円超の上場企業を対象に、各社の平均残業時間でランキングし、残業代減少のリスクが高い高年収企業を探った。