壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になっている今、ぜひ参考にしたいのが、元会社員で『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作で悲喜こもごもの人生模様を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏の著書『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)だ。弘兼氏のさまざまな経験・知見をもとに、死ぬまで上機嫌に人生を謳歌するコツを説いている。
現役世代も、いずれ訪れる70代、80代を見据えて生きることは有益だ。コロナ禍で「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにして、どのように「今を生きる」かは、世代を問わず、誰にとっても大事な課題なのだ。人生には悩みもあれば、不満もあるが、それでも人生を楽しむには“考え方のコツ”が要る。本書には、そのヒントが満載だ。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』より一部を抜粋・編集したものです。
右肩上がりの「50歳時未婚率」
異性との恋愛関係から、結婚に発展する可能性は、高齢者であっても当然考えられます。
「生涯未婚率」という言葉があります。50歳までに一度も結婚したことのない人の割合を示した数値であり、5年に一度の国勢調査に基づいて、国立社会保障・人口問題研究所が公表してきました。
現在は「生涯未婚率」とはいわずに「50歳時未婚率」という言葉が使われています。「50歳以降は結婚できないと決めつけているのか」というクレームが寄せられたからだそうです。この50歳時未婚率は、時代とともに右肩上がりの傾向を示しています。
50歳時未婚率は男性3割、女性2割に
1985年までは男女ともに5%未満だったのですが、2000年になって男性が10%を超えました。2010年になると男性は20%、女性も10%を超え、完全に「晩婚化」「非婚化」の流れが定着しました。
2015年には男性23%、女性14%となり、もはや男性の4人に1人、女性の7人に1人は50歳になっても未婚という状況です。国立社会保障・人口問題研究所では、2035年に男性約29%、女性約19%に達すると推計しています。これは全国平均であり、都市部の未婚率はもっと高くなるはずです。
高齢になって結婚する可能性は大いにある
未婚率が高くなった理由は、「結婚を面倒だと思うようになったから」「非正規労働者の数が増えたから」など、いろいろといわれています。結婚しない人が増えると、少子化に拍車がかかりますから、社会的な問題とされるのはよくわかります。
ただ、あえてポジティブな面を探せば、50歳を過ぎた独身者がたくさんいるわけですから、高齢になってから結婚をする可能性も大いにあるということです。
また、今の日本の離婚率はおよそ35%。離婚してシングルになった人もたくさんいます。高齢になると配偶者と死別するケースも増えますから、これから高齢者の結婚が大きなマーケットになることは十分に考えられます。
『黄昏流星群』の世界がより現実に
僕は『黄昏流星群』という作品で中高年の恋愛と結婚を描きましたが、まさにあの世界観がもっとリアルなものになるというわけです。
高齢者の結婚にハードルがあるとすれば、それは「相続」の問題です。高齢になった親の結婚は、たいていは家族から猛反対されることになります。
例えば、70歳を過ぎた一人暮らしの父親が、急にひと回りくらい年下の女性を連れてくると、子どもたちはザワつきます。
相続が“争続”に発展する!?
財産を相続するときの割合は法律で定められていて、配偶者に2分の1、子どもに2分の1となっています。配偶者が亡くなり、子どもが2人いれば、子ども1人あたり2分の1を相続する計算です。
「きょうだい2人で半分ずつ相続するはずだったのに、どこの誰とも知らない女に、お父さんの財産を2分の1持っていかれるかもしれない」。そんなふうに、子どもたちは心中穏やかではなくなります。中には“争続”へと発展し、裁判沙汰になったり親子断絶となったりするケースもあります。
籍を入れない「パートナー婚」がいい
70代で結婚を考えるなら、同居しても籍を入れない「パートナー婚」が望ましいと思います。
事実婚でも財産分与は認められる可能性があるので、再婚相手への財産分与はしないと決めて、遺言書などを作成しておくと子どもたちも安心で、争いごとも避けられます。
それでパートナーに納得してもらえないなら、再婚相手として相応しくないと判断することもできるでしょう。きちんと手順を踏んでおけば、「お父さんの面倒はあの人にみてもらえるし、相続のトラブルも起きないからよかったんじゃないの」と子どもたちからも祝福してもらえるはずです。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。