検討対象は、2016年6月~2018年6月に、慶應義塾大学病院および複数の関連施設で白内障手術を受けた患者のうち、調査に協力した247人(平均年齢67.9±11.4歳、女性59.9%)。手術前後の1カ月に、主観的幸福感尺度(Subjective Happiness Scale;SHS)と、ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index;PSQI)に基づき睡眠の質を評価、また術後1カ月に手術に対する満足度を評価した。

 なお、白内障には主に、水晶体の周辺部が濁る「皮質白内障」、水晶体の背側が濁る自覚症状が比較的強い「後嚢下白内障」、水晶体の中央部が濁る「核白内障」というタイプがある。今回の検討対象者では、皮質白内障が71人、後嚢下白内障が54人、核白内障(5段階の進行レベルのうち3以上)が54人を占めていた。また、同時期に両眼の手術を受けた人が173人、片眼のみ手術を受けた人が74人だった。手術は全て超音波水晶体乳化吸引術という、標準的な方法で行われた。

 結果について、まず手術前と手術後の変化を見ると、視力関連指標が手術後に改善していたことに加えて、主観的幸福感(SHS)が手術前の4.6±0.7から手術後は4.8±0.7になり、有意な上昇が認められた(P=0.007)。また、睡眠の質(PSQI)も5.1±2.7から4.8±2.7となり、有意な改善が認められた(P=0.009。PSQIスコアは低いほど睡眠の質が高いことを意味する)。なお、手術に対する満足度は5点満点中4.2±0.9だった。

 手術前の主観的幸福感に関連する因子として、多変量解析の結果、核白内障と矯正視力の2つが、有意な関連因子として見いだされた。次に、手術後の主観的幸福感に関連する因子を見ると、高齢であること、および、手術前の主観的幸福感が高いという2項目が、有意に正相関する因子だった。

 続いて、手術前から手術後の主観的幸福感の変化に関連する因子を検討すると、手術後の満足度スコアが高いことのみが有意な因子として抽出された(β=0.169、95%信頼区間0.051~0.287、P=0.005)。そこで、手術後の満足度スコアに関連する因子を検討すると、術後の主観的幸福感の他に、後嚢下白内障の解消(β=0.277、同0.033~0.520、P=0.026)と、術後の睡眠の質が高いこと(β=-0.041、同-0.079~-0.003、P=0.035)が有意に関連していた。

 これらの結果をもとに著者らは、「白内障手術は視機能だけでなく、患者の主観的幸福感も改善する可能性があることが示された。その主観的幸福感は手術に対する満足度と関連しており、手術に対する満足度は、睡眠の質の改善と後嚢下白内障の解消の影響を受けることが明らかになった」と結論付けている。(HealthDay News 2020年11月16日)

Abstract/Full Text
https://www.nature.com/articles/s41598-020-72846-2

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