日本のものづくりは
なぜ強かったのだろうか?

 こうした問題を考えると、どうしても自動車やエレクトロニクスの生産現場が頭に浮かんでくる。たしかに、こうした産業のものづくりの力が強いことは間違いない。しかし、自動車やエレクトロニクスが強いのは、素材、部品、そして製造機械などで、日本企業が高品質の製品を提供してきたからという面もあるのだ。

 自動車産業を例に考えてみよう。日本の自動車メーカーが、自社の工場内で生み出す付加価値は、総生産額の3割程度である。部品の多くを外から調達しているからだ。日本の自動車の競争力は、自動車メーカーが調達する部品の品質に依存している面がある。強い自動車メーカーが優れた部品メーカーを鍛えているとも言えるが、優れた部品メーカーが強い自動車を支えているとも言える。

 自動車工場に行くと、ロボットや工作機械など、多くの日本製の製造装置が並んでいる。日本のロボットや工作機械は強い国際競争力を持っている。そうした製造装置を利用できるから、日本の自動車のコスト競争力は強いとも言える。

 素材でも同じだ。日本の鉄鋼メーカーが提供する薄い鋼板は、デザイン性のある自動車のボディにはどうしても必要な存在だ。最近は韓国や中国のメーカーもそうした製品を提供するようになってきたが、日本のメーカーの技術を必死になって吸収した結果でもある(もっとも、日本の技術を盗んだのではないかと法廷で争われるケースも出てきているようだが)。

 いずれにしろ、素材、部品、製造機械などの分野が強いことが、日本のものづくりの基礎にある。これは今後の日本のものづくりを考える上で基本となる。冒頭の韓国への投資の話からもわかるように、日本の素材メーカーや製造機械メーカーは、その販路を日系企業だけでなく、アジアの有力企業に広げていくだろう。

 これまでは、日本国内で分業が完成していた面がある。日本の素材やデバイスを日本の製造機械を利用して、日本の組み立てメーカーが完成させる。そしてその製品を海外に輸出していく。少し単純化した記述ではあるが、日本のものづくりにこうした面が強かったことは事実である。これを日本のフルセット主義と呼ぶ人もいる。