研究の対象となったのは、18~45歳の18人の健康な男性(平均年齢23.9±7.3歳)。試験デザインは、二重盲検クロスオーバー無作為化プラセボ比較試験。フラバノールを高用量(681.4mg)含むココア、または低用量(4.1mg)含むココアを摂取してもらい、2時間後に高炭酸ガス負荷試験という検査を行った。1人の被験者に対して、高用量条件と低用量条件の計2回実施。試験の間隔は最低2週間以上あけた。また、摂取したココアがどちらの用量かは、被験者および高炭酸ガス負荷試験を行う研究者のいずれも知らされてなかった。
効果の判定に用いた高炭酸ガス負荷試験とは、5%の高濃度炭酸ガス(空気中の濃度の約100倍)を吸入する試験。これを行うと、過剰な炭酸ガス濃度を下げるために酸素の供給量を増やす必要が生じ、脳への血流を高めるような反応が起こる。本研究ではこの高炭酸ガス負荷試験のほかに、行動の制御や意思決定にかかわる前頭葉領域を重点的に調べる脳画像検査や、問題解決能力を評価する認知機能テストを行った。
その結果、高炭酸ガス負荷試験を受けた17人のうち13人では、高用量フラバノール条件での酸素化反応の上昇幅が低用量条件の約3倍に達した。また反応が現れるまでの時間は、低用量条件より高用量条件のほうが約1分短く、高用量のフラバノール摂取後には酸素化反応が素早く生じることが分かった。条件間でのこのような反応の違いは、脳画像検査でも確認された。さらに、問題解決能力の評価では、難易度の高い問題に対する回答速度が、高用量条件で有意に短かった。
それでは、この研究結果をもとに、カカオを原材料とするチョコレートをすぐに買い求めるべきだろうか。Rendeiro氏によると、それは少し違うようだ。「残念ながら、チョコレート製品にはフラバノールの含有量が表示されていないため、どの程度の量が含まれているのか、われわれは知ることができない。市販のチョコレート製品を調べたこれまでの研究からは、チョコレートの製造過程でかなりの量のフラバノールが失われてしまっていることが示唆されている」と、Rendeiro氏は解説する。
ただし同氏は、「ブドウや緑茶、リンゴ、ベリー類などフラバノールが豊富に含まれている他のさまざまな食品を摂取することで、脳や血管機能に対して有益な効果を得るために必要な量のフラバノールを摂取できる可能性はある」との見解を示している。(HealthDay News 2020年11月30日)
https://consumer.healthday.com/11-30-could-cocoa-give-your-brain-a-boost-2649019571.html
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