「ややこしい話をシンプルに説明する人」や「瞬時に自分の意見を出す人」を見ると、多くの人が「この人は頭がいい」と感心する。なぜ「頭のいい人」は、いつでも「スジの良い意見」や「わかりやすい説明」ができるのだろうか。
会員数100万人超の「スタディサプリ」で絶大な人気を誇るNo1現代文・小論文講師が、早く正確に文章を読み、シンプルでわかりやすい説明ができる頭の使い方を『対比思考──最もシンプルで万能な頭の使い方』にまとめた。学生から大人まで「社会で通用する論理的な思考」が身につく画期的な1冊と話題だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。
対比を出して中間を行く
あるテーマに対し、説得的に自分の意見を述べるためには、まず2つの対極的意見を提示します。両極ですから、どちらかがより有効であるかを検討したり、比較した上で片方を自分の意見として採用することができそうです。
さらに、そのどちらにも致命的な欠陥があることを示し、「両極の中間」にある、より説得的な第3案を自分の意見として提示することもできます。
「両極の中間」というのは、文字通りの真ん真ん中とはかぎりません。まず、どんな両極を想定するかにも相当なバリエーションがあり、オリジナリティが発揮されます。さらにその両極の幅の中で、どこに突破口を見つけるかにも無数のバリエーションがありえます。
「ニッチ」とは、対比の狭間から最適解を探る思考だ
ニッチもある種、中間を行く対比的思考法です。
ニッチとは、もともと建築物の壁と壁の狭間を意味することばです。経済や経営の分野では、「大企業がターゲットにしないような小さな市場」「潜在的なニーズはあるものの、まだビジネスの対象にはなっていない分野」を意味します。「ニッチ・インダストリー」「ニッチ・マーケット」という表現がよく使われます。
単なる形式的中間、妥協的中間ではなく、大企業の真似をしても太刀打ちできない中小企業が、大企業と大企業の中間で、最適解を探る積極的な思考なのです。
もっとも「中間」「狭間」「隙間」は「正道を行く」イメージに見劣りするかに思われがちですが、そうではありません。中間には、その両極に還元されない独自性があります。
それを説得的に教えてくれているのが、細胞機能の研究者である中屋敷均さんです。『科学と非科学』(講談社)によれば、氷(固体)と水蒸気(気体)に対する中間である「水(液体)」はきわめて特異な性質をもち、全宇宙において希少な存在形態だと言います。さらにその水と関係の深い生命も、鉱物や結晶のような「安定」と、エントロピー増大の法則に従う「無秩序・カオス」との希少な中間なのだそうです。
私たちが何かアイディアを考える際にも、目の前にはっきりと見えるものだけでなく、対極にあるものの中間を意識することで、新たな打開策を見つけることができるのではないでしょうか。
(本原稿は、『対比思考──最もシンプルで万能な頭の使い方』からの抜粋・編集したものです)