この結果から言えることは、この集団は、自分が説明する場合は、経過手法、積上手法を好んで用いているが、説明される側からはそれほど求められていないということだ。だとすれば、経過手法や、積上手法は、使う頻度を低下させた方がよい。

 一方、逆算手法、重要手法、緊急手法は、自分が説明する場合以上に、説明される側から求められていることがわかる。逆算手法、重要手法、緊急手法を多用していければ、話が通じやすくなり、かみ合うことになるといえる。

 これは100人のさまざまな地域、業種、職位の演習参加者の平均データだが、企業別、部門別、職位別に見ると、説明する場合と説明される場合のギャップが、より顕著になる。

相手が好む手法で
説明しているか

 グラフ2は、自動車メーカーの一部門のリーダーが好む説明手法と、その部門のメンバー24人によるリーダーが好む手法の推定結果を示している。

 リーダーは分解手法、逆算手法で説明されることを好んでいるが、メンバーは、そうしていない状況があることがうかがえる。リーダーは積上手法、貢献手法で説明されることを全く好んでいないが、メンバーはこれらの手法で説明してしまっている。グラフに表れたこうしたギャップが、まさにかみ合わなさの原因なのだ。

 この部門は、私が見たところ、リーダーとメンバーの関係の質が相当程度高いのだが、それでもリーダーが好む説明手法と、メンバーの推定結果に、これだけのギャップがある。逆に言えば、このギャップを解消すれば、さらにコミュニケーションの状況は良好になり、事業革新は加速するに違いない。

 どの説明手法を使うかは、テーマや状況にもよるが、相手が理解しやすい好みの説明手法を用いることが肝心だ。特に、ビジネス経験を積んだ相手であればあるほど、自分の好み、クセが確立してしまっている人が多いので、それに合わせて説明することが、相手の理解を促す早道といえる。