ダリオが唱える「投資のパラダイム・シフト」

 一方で、金そのものに注目し、金価格と連動するETFを買っている大物投資家もいます。

 世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエーツを率いるレイ・ダリオです。

 ダリオは、投資家にはよく知られている人物で、ファンド運用面ではリーマンショックを無傷で切り抜けたことで有名です。

 ダリオは、未来の投資の世界について、これまでの投資の常識が変わる「パラダイム・シフト」が起こるだろうと発言しています。

 何が変わるかというと、これまでのように「株を買えば儲かる時代」が終わり、「金投資が重要になる時代」になるということです。

 もう少し具体的にいうと、現状は多くの投資家が株などへの投資を中心に考えていますが、今後はリターンが減る可能性があるということ。そして、リスク軽減と収益性向上を両立できるポートフォリオに変えるために、金に投資をしたほうがよいというメッセージを発信しています。

 ダリオによると、投資の常識の変化はリーマンショックから始まっています。

 リーマンショックによる景気悪化を食い止めるために、世界の中央銀行は量的緩和、金利の引き下げ、国債の買い上げなどを通じ、市場にお金を供給しました。

 市場のお金を増やすことにより、株などの投資商品にお金が向かいやすい環境と、「株を買えば儲かる」という「投資の常識」をつくってきたわけです。

 実際、リーマンショック時に8000ドルを下回ったダウ平均株価は、底値からほぼ一直線に上がり、コロナショック後でも3万ドル手前まで伸びています。

 ただ、ダリオの考えによると、市場にお金を増やし続けても、以前のように株価は上がりません。株式投資の魅力も以前より下がります。

 なぜなら、マネーサプライの増加や金利の引き下げ予想から株価は着々と上がっていますが、そのペースが速く、多くの企業の利益の増加ペースを上回るからです。

 そのことに市場が気づき始めると、上値が狙いにくい株などへの投資から金などのような安全性が高い資産を買うようになります。

 ポートフォリオに少量でも金を組み込めば、マネーサプライの増加によってお金の価値が下がっていくリスクにも対応できます。

 このような変化によりこれまでの投資の常識が「パラダイム・シフト」するだろうと考えているのです。