大量の新入部員が押し寄せてきた
『笑ってコラえて! 吹奏楽の旅』の京都橘特集は、2011年、2012年と2年にわたって放映され、最初の年はしっかり者の3年生ドラムメジャーの“ホラっちゃ先輩”や、何をやってもうまくいかない1年生の“このみ”など、部員の生き生きとした様子が映し出されました。
マーチングの素晴らしさに加え、日頃のひたむきな練習が見る人の心を捉えたのでしょう。オレンジの悪魔たちはいきなり全国区の人気者になり、その練習ぶりも広く知れ渡ったのでした。
そんな2011年のマーチングコンテストは、全国銀賞。部員数が3学年足しても60名ちょっとという、私の在籍中でも最も小さなチームでした。これはまったくの偶然なのですが、「笑コラ」では、「人数さえそろっていれば、全国大会で金賞を取れた」と言わんばかりに放映されました。テレビ的な演出だったと思いますが、視聴率はポンと上がったようです。
上がったのは視聴率だけでなく、2012年の入部希望者が春休み時点で60人を超えていました。テレビの影響力というのはすさまじく、結局、全部員のうちの6割を新入生が占めることになりました。
座奏だけなら多人数は良い方向に働くことが多いのですが、マーチングでは少々やっかいです。新入生のほとんどが楽器の経験者ですが、マーチング経験者は半分。中学のマーチング経験者であっても、橘マーチングに慣れるのは一朝一夕では難しいのに、初心者が半数いるのですから一大事です。
いつもどおり先輩から後輩へ、“ちょっと弱い人”が“もっと弱い人”を指導しようにも、もっと弱い人が倍の人数だと手に負えない面も出てきます。
こうして2012年の「笑コラ」は、「『3000人の吹奏楽』を前にした上級生が、鬼の形相で1年生を指導する」という、テレビ的には大歓迎の“絵”が撮れたようです。シンバルを抱きしめて涙ばかり流しているパーカッションの1年生にスポットが当たり、これも大きな反響がありました。