中堅校にシフトする受験生

 3つ目のキーワード「中堅校」は四谷大塚の80%合不合偏差値で40台、以前の記事ではE・Fランクに相当する入試の学校である。難関・上位校と比べると注目を浴びることは少ないものの、中学受験ではボリュームゾーンの学校であり、2021年入試ではこのランクの学校が出願者数を増やしている点が特に注目される。

 これは安全志向の表れでもある。難化して倍率も上がった午後入試は避け、実力があっても中堅校で確実に合格を得るという動きがうかがえた。目立ったのが、親世代のブランド校である非ミッション系女子伝統校の復調だろう。山脇学園(募集人員280人)、跡見学園(同260人)、昭和女子大学附属昭和、実践女子学園(同220人)、和洋九段女子といった学校で、募集人員が比較的多く、入りやすいことも背景にはある。

 日大大学の正付属・半付属校も、神奈川の日本大学と日本大学藤沢が振るわなかったのを除けば、先述した男子校の日本大学豊山を筆頭に、女子校の日本大学豊山女子も含め総じて好調だった。こちらの背景には、日本大学の系列校特有の進学システムが考えられる。系列大学への進学を担保した上で、国公立大学の受験も可能となっているからだ。

 新設校では、広尾学園小石川の2回目以降の入試は人気だった。広尾学園はインターの人気が特に女子に高かった。高校在学中にアメリカの大学の入門レベルのカリキュラムが学べるAPプログラムや手厚いネイティブ教員の存在などが人気の秘密だろう。

 中堅共学校人気の指標となる学校が淑徳巣鴨で、こちらも女子出願者の伸びが大きかった。1日午前のS選抜は実倍率が3倍を超えている。ドルトン東京学園も2・4科型の1日は61%増と大人気である。東京成徳大学は各入試の出願者数は100人に届かないものの、前年比で1~2割程度出願者数を伸ばしている。女子美術大学付属もすごかった。

 中位校では宝仙学園共学部理数インターが、1日特待1回で男子78%増、女子87%増と人気だった。この学校は、どの入試も実倍率は1倍台前半でとても入りやすいのだが、大学進学実績は頑張っている「入りやすくてお得な学校」の典型例でもある。

 2020年は新型コロナ禍の影響もあり、受験生の得点力が落ちている様子がうかがえる。今後検証が必要となるが、現在の小学5年生は一番基礎力を付けなければいけない時期を直撃された被害者でもある。今年の得点状況を見て入試問題の難度を再考する動きも出てくるかもしれない。

 ここ数年伸び続けている淑徳、開智日本橋学園、日本工業大学駒場、三田国際学園、東洋大京北、青稜といった学校は2022年入試でも出願者を増やしそうである。私立中学受験のニーズは萎まなかった。2022年も大丈夫だろう。しかし、今の小4生が受験する2023年からは減少傾向に転じるかもしれない。

【訂正】記事初出時より、以下の点を訂正いたしました。
文末から6ブロック目:他大学→国公立大学
(2021年2月10日16:15 ダイヤモンド社教育情報)