「コップ」にめちゃくちゃ悪口を言う
――机の前でアイディアを考えているときもあると思いますが、何も浮かんでこないときはどうされていますか。
藤原 「朝、なんかモヤモヤしてることなかったかな?」と、シチュエーションをしぼって考えることが多いですね。そうすると、いままでスルーしてきたことに気がつきやすくなるんです。たとえば、毎朝、使っているコップに対して悪口をめっちゃ言ってみるとか。
そうすると、水滴がつくと手が濡れて冷たくなってムカつくとか、冬はマグカップに熱い飲み物を入れてもすぐ冷めるからムカつくとか、いろいろ出てきます。
そこから、「じゃあ、どうすればムカつかなくてすむようにできるだろう?」って考える。そうやって問題を解決する方向で考えて生まれた作品はいっぱいあります。
――『考える術』にも出てくる「スタバのメッセージを入れられるマシーン」も、「あるある!」と思いました。
藤原 スターバックスで飲み物を買うと、店員さんがカップに「Thank you!」「勉強がんばってくださいね」みたいに、お客さんをちょっと幸せな気分にするひと言を書いてくれることがあるらしいんです。でも私は、しょっちゅうスタバに行っているのに、何も書いてもらったことがない……。
そのことにずっとモヤモヤしていたので、この嫉妬からアイディアを考えて、スタバのカップをセットすると、店員さんの手書き文字のようなスタンプを押せるマシーンをつくりました。
「ネガティブな思い」を1つずつつぶしていく
藤原 でも怒りや嫉妬といった、ネガティブな感情からアイディアを考えるときは、攻撃的にはならないように気をつけています。むしろ、怒りや嫉妬の対象の人自身が笑ってくれるかどうかって考えたり。
家族とか友だちとか、いろんな属性の人の顔を思い浮かべて、私が考えたアイディアが誰かを傷つけるかもしれないと気になったら、そのままでは出さないほうがいいかなと考え直すようにしています。
できるだけ考えの違う人の視点も獲得したいと言いましたが、他人に対する視点が増えると、自分が考えたアイディアで人を不快にさせたり、怒らせたりすることはしたくないということも、自然と意識するようになります。
――ネガティブな感情から考えているといっても、藤原さんの作品って、モヤモヤを解消して笑いに転じてくれるからポジティブですよね。じつは明るいというか。
藤原 はい、作品をつくるためにネガティブな気持ちに向き合うようにしていますが、基本的には楽しい気持ちを大事にしています。今日は、買ってきたイチゴを食べるのがすごい楽しみですし、そんなささやかな幸せを毎日感じながらめっちゃ明るく生活しています。
ネガティブな感情はあっても、それを解決する変な作品や面白い作品を完成させていく過程はすごく楽しいです。「楽しく生きること」が人生の目的なので、そのためにネガティブな感情と向き合って、アイディアを考えて、「無駄づくり」で嫌なことを1つ1つつぶしていっているような感じです。
【大好評連載(全5回)】
第1回 「頭のかたい人、柔らかい人」の決定的な3つの差
第2回 「頭の柔らかい人」がしている4大習慣
第3回 【必見】「史上最高に無駄な発明」ベスト3
第4回 「頭の柔らかい人」は知っている3大発想法
第5回 【藤原麻里菜】ネガをポジに反転させる思考法