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経営学の大家ヘンリー・ミンツバーグ。『マネジャーの仕事』『戦略サファリ』などのベストセラーでも知られる氏が「これは私にとって12冊目の著書だ。これまで書いた中で一番真剣な本と言えるかもしれない」と述べるのが2月17日に発売となった『これからのマネジャーが大切にすべきこと』である。

本書は「マネジャーは欠点を見て選べ?」「意思決定とは『考えること』ではない」など、42のストーリーで構成されており、遊び心に富んだ表現で、マネジャーの仕事の本質を鋭く説いている。

今回はその中のストーリーの1つ、「マネジメントとリーダーシップ」を紹介する。

リーダーシップ神話がもたらす悪影響

 リーダーシップをマネジメントと切り離し、マネジメントより高度なものとみなす「神話」が浸透している。この神話はマネジメントに悪影響を及ぼしてきた。リーダーシップへの悪影響は、それに輪をかけて大きい。

 よく、正しい物事をおこなうのがリーダーで、物事を正しくおこなうのがマネジャーだと言われる。もっともらしい分析だが、この見方は間違っている。正しくない方法で正しいことを実行することなど不可能だからだ。

 カナダ・ロイヤル銀行のジョン・クレゴーン会長は、街で故障したATMを見ると、出張中でも本社に電話することで知られていた。同社には膨大な数のATMがある。クレゴーンは、細かいことに口出しするマイクロマネジャーだったのだろうか。そうではなく、手本を示すことでリーダーシップを発揮していたと言うべきだろう。ときとして、最良のリーダーシップは、質の高いマネジメントという形で実践されるのだ。

 あなたは、リーダーシップのないマネジャーの下で働いたことがあるだろうか。それは、さぞ士気の下がる経験だったに違いない。では、マネジメントをしないリーダーの下で働いた経験は? そのようなリーダーは、現場で起きていることを把握できないだろう。スタンフォード大学で教鞭を執った組織論研究者のジェームズ・マーチが述べたように、「リーダーには、詩人であることと配管作業員であることの両方が求められる」のである。