──なるほど! たしかに、ストレスに敏感な人に「敏感になるな!」って言っても無理ですもんね……。
森:器を大きくするんじゃなくて、「でかい蛇口から効率よく出す方法」を考えればいいんです。お酒を飲んだり、歌を歌ったり、マラソンしたり、武道をやったり、何かしら自分の趣味の時間に費やしたり。人によってその発散方法はちがいますが、自分にとってベストな発散方法がわかるといいですよね。
──コロナ禍で憂鬱な気分になる人が増えた、という声もよく耳にしますけれども、もしかするとストレスの蛇口を塞がれてしまったからなのかもしれませんね。
森:そうだと思いますよ。自分なりのストレス発散方法がない人って、やっぱり病んでしまうんですよね。
メンタルが強い人ほど弱音を出すのがうまいワケ
──中間管理職時代、ストレスをためないために日常的にやっていた習慣などはありましたか?
森:「心に抱えているプレッシャーを言語化する」ことですね。私はA4サイズのノートを「極秘ノート」としてつねに持ち歩いていました。事件を解決するためにこれをやろうとか戦略的なことはもちろん、不安やストレス、イライラなども全部書きまくっていたんです。ネガティブなことをありのままに洗い出して、自分の内面と向き合う時間をつくっていました。「なんで私はいまイライラしているのかな? 原因1:あいつがあんなことを言ったからだ!」みたいに。
──たしかに、それは誰にも見せられない極秘情報ですね(笑)。
森:でも、ありのままに全部吐き出すっていうのが大事なんですよ。イライラしている原因がわかると、じゃあ、どうすればイライラが治るかな? と冷静に考えられる。冷静になると、「あ、もしかしたらあれは私のために言ってくれたのかもしれない。ありがたいことだな」とポジティブな見方もできるようになってくる。文字化することによって、感情が整ってくるんです。
結局のところ、メンタルを強く保てるかどうかって、「自分とのコミュニケーションがうまくできているかどうか」です。悩みやストレス、イライラがあっても、自分とうまくコミュニケーションをとって納得させられれば、いつも平常心でいられる。でも、付き合い方が下手だと、「なんで、私はこんなにダメなんだろう」と責めてしまう。
だからプレッシャーを吐き出して可視化し、ストレスを溜めないようにするのがすごく大事。信頼できる部下に弱音吐いてもいいと思いますよ。じつは、プレッシャーに弱い人ほど、自分の弱みを「隠そう隠そう」とするんです。弱みをさらけだすと自分にとって不利になるんじゃないかと思って、隠してしまうんですよね。でもじつはその逆で、弱みをさらけ出したほうが、人は強くなれるんです。心理学用語で「アンダードッグ効果」というのですが、これは「人の弱音を聞くと周りが応援したくなる現象」のこと。プレッシャーを吐き出してみたら、案外部下や同僚が応援してくれるかもしれませんよ。
「弱気になる」のと「自分の弱さを知る」のは違うのです。人間はどうしても自分をよく見せようとしてしまいがち。「完璧・正解でいなきゃ」という思い込みにはまり実力以上のことをしようとして、ストレスに押しつぶされてしまうんです。
自分の弱さを知ることができれば、高望みはしなくなります。克服する必要はないし、完璧な人にならなくていいので、ときにはノートや周りの人に吐き出したりして弱さを受け入れてみましょう。肩の力が抜けて意外といい結果につながるかもしれませんよ。
最後に、ストレスをためてしまう人やプレッシャーに弱い人におさらいです。
1. ストレスに耐えようとするのではなく、ストレスを発散する方法を見つける
2. プレッシャーを言語化することで、自分とのコミュニケーションをうまくやる
3. 弱みをさらけ出して、周りからの協力を得る
この3つを心掛けるだけで、ストレスをだいぶコントロールできます。私もそうでしたが、組織の中にいると、あらゆる人間関係に頭を抱えます。環境はすぐに変えられないのですから、なるべく自分の中で抱え込まないように、外に出していきましょう。
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第1回 1日10秒でメンタルを強くする3つの習慣