ある人があなたの物件を買う時の利回り=期待利回り

 では、この表面利回り8%という成績を持った物件の市場での不動産評価額はいくらだろう?

 1億2000万円もの投資をしたのだから、実際の不動産市場価値として1億2000万円がお買い得だったのか、投資損を抱えているのか、知りたくはないだろうか?

 つまり、仮にあなたの物件を売却する時に1億2000万円以上で売れるのか? それとも値引きされて損が出てしまうのかを知るのだ。

 これは専門用語でValuation、つまり不動産評価額算定と呼ぶ。

 基本的には収益還元法と呼ばれる、不動産の家賃収入からの逆算で、不動産価値を求める手法が収益不動産の売買では多く使われる。

 このやり方は世界共通でもあることから、ぜひ収益還元法(Income Capitalization Approach)を学んでもらいたい。

 収益還元法は、言葉は難しいが理屈はシンプルだ。つまり、不動産マーケットである投資家が、あなたの不動産を買うとしたら、どれくらいの利回りを期待して買うか? という問いに答える計算式だ。

 この期待利回りのことをCap Rateという。厳密にはCap Rateは還元利回りとされるが、不動産投資で概念を掴んでもらうために、ある人があなたの物件を買う時の期待利回りと捉えればいい。

 例えば、この物件が東京都心の新宿区にあり、鉄筋コンクリートの築10年の建物だとすると、一般的な投資家の期待利回り(Cap Rate)は5~6%ほどだ。

 このCap Rate の把握方法は意外と簡単で、インターネット上に売りに出ている近隣物件で、似た様な建物が表面利回り何%で売りに出ているかを何件かリサーチすればよい。

 日本では表面利回りに対する期待利回りが一般的な投資家の関心事なので、表面Cap Rateを使って算出してみよう。

上田真路(うえた・まさみち)
建築家・不動産投資家
KUROFUNE Design Holdings Inc. 代表取締役CEO
ハーバード大学デザイン大学院で不動産投資と建築デザインを学び、投資理論とデザインの力を融合させたユニークな不動産投資を行う。
鹿島建設入社4年目に不動産投資を開始。数々の不動産投資セミナーに足を運び、不動産関連書籍を数十冊読破。そんな中で出会ったメガ大家集団をメンターに持ち、指導を仰ぎながら不動産投資をスタートする。最初に行った東京・神楽坂での新築マンション開発では超狭小地に苦労し、辛酸を舐めつつも独自の不動産投資スタイルを確立する。現在5棟の超優良物件を保有。保有物件の中では投資額が4年間のうちに26倍になったものもある。
1982年高知県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院卒業後に鹿島建設入社。
大学院卒業時にリゾートホテル開発プロジェクトにより早稲田大学小野梓芸術賞を受賞。
同社では国内外で建築設計や大規模な都市開発業務に従事。鹿島建設社長賞、グッドデザイン賞、SDレビュー賞などを受賞。2016年、ハーバード大学デザイン大学院(GSD)へフルブライト留学。2018年、GSD不動産デザイン学科を卒業、外資系不動産ファンドでの投資業務を経験した後、KUROFUNE Design Holdings Inc.(デザイン事務所兼不動産ファンド会社)を創業し独立。現在はハーバード学生寮生活で得た原体験をもとに、住まいと学びを融合させた国際学生寮「U Share」を開発運営する。また、慶應義塾大学SFC特任講師、早稲田大学特任講師として「不動産デザイン」について教えている。