長引くコロナ渦中。引きこもりがちな毎日に、ストレスを感じている人も多いのではないだろうか。在宅勤務をきっかけに夫婦関係や子どもとの関係がギクシャクし始めた、という人も少なくない。寝ても疲れが取れない、ちょっとしたことでイライラする、自分だけが取り残されているように感じる……という人にぜひ読んでほしいのが、2021年4月14日に刊行した『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』(クルベウ 著 藤田麗子 訳)だ。
原著は韓国で2020年7月に発売。発売後5ヵ月で6万部を突破し、韓国の大手書店でもベストセラーランキング入り。
「つらいときにひとりで読みたい」「低くなった自尊心を満たしたいときはこの本が役立つ」「誰が読んでも共感できる内容」と絶賛の声が数多く寄せられている。
精神科医の関谷秀子さんも
「この本は病院に行くほどではないが、日常生活で悩みを抱えている人、疲れている人におすすめだ」と言う。今回は関谷秀子さんに本書の中のテーマのひとつである、「パートナーとのすれ違い」について聞いた。

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子どもを巻き込むケースも少なくない

関谷秀子(Sekiya Hideko)
精神科医・法政大学現代福祉学部教授・博士(医学)
法政大学現代福祉学部教授・初台クリニック医師。前関東中央病院精神科部長。子どものこころ専門医、日本児童青年精神医学会認定医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医、日本精神分析学会認定精神療法医・スーパーバイザー。児童青年精神医学、精神分析的発達心理学を専門としている。児童思春期の精神科医療に長年従事しており、精神分析的精神療法、親ガイダンス、などを行っている。著書に『不登校、うつ状態、発達障害 思春期に心が折れた時親がすべきこと』(中公新書ラクレ)がある。

私は精神科医として、児童・思春期の子どもの診療にあたっているが、その際に「夫婦関係が子どもの発達に影響を及ぼしているのでは?」と思われるケースがしばしばある。

「夫はどうしたらもっと子育てを手伝ってくれるのか」
「妻はどうしたらきついものの言い方を直してくれるのか」

時には子どもを自分の味方につけようと巻き込んで、言い合いを繰り返す。一見よくある夫婦げんかに聞こえるかもしれないが、夫婦だけでは解決できないほどにこじれている場合もある。40代のAさん夫婦のケースもそうだ。

「相手が変わること」を求めすぎている

Aさん夫婦は中学生の娘の不登校について悩んでおり、その原因は相手のせいだと信じて毎晩夫婦げんかを繰り返していた。昨年私は「子どもに対する親の接し方」についての本を出版したのだが、Aさん夫婦はその本を読んだことをきっかけにクリニックにやってきた。

2人は診察室に入ると、それぞれ1冊ずつ、私が執筆した本を取り出した。本の中の「親が気をつけるポイント」には、赤と黄色のマーカーがたくさん引いてあった。

夫婦はお互いに相手ができていない部分にマーカーを引いて、「あなたはここができていない」「お前こそこれが全然できていないじゃないか」とお互いを責め続けていたのだった。診察室内で夫婦げんかが始まることはよくあるのだが、Aさん夫婦の言い合いは激しく、なかなか止まらない。

私は机の上に置かれた2冊の本の「相手の欠点を子どもの前であげつらったり、責め続けたりすることはやめましょう。相手に変わることを求めるのではなく、自分が繰り返しているパターンを変える方法を考えましょう」という箇所にそれぞれ鉛筆で線を引いて2人に渡した。2人は一瞬ハッとした様子で、やっと言い合いをやめた。

そして、親としてお互いに協力して、娘の発達を阻害することなく、娘に接することができるように、「親ガイダンス」(専門家が親に対して子どもの無意識の心の動きを伝え、子どもの発達を促すような接し方について知識提供を行うこと)を受けることを決意して帰っていった。