「リーダー」と「素の自分」は別の存在

――安藤さんの話を聞いていると、本当に理にかなったロジックだとつくづく感じるのですが、それでもリーダーとして、なかなかこのやり方を徹底できないのは、どういう理由があると考えますか?

安藤:やはり、その人が「何に恐怖を感じているか」だと思います。

 本来、リーダーは「業績が上げられない」「目標を達成できない」ことに恐怖を感じるはずなんです

 だからこそ、結果に直結する行動をすることが大事、となります。

 ところが、実際には「部下から嫌われるんじゃないか」「自分のやり方に反発しているんじゃないか」「信頼を失っちゃうんじゃないか」という恐怖に苛まれてしまうんです。

 リーダーとして何が大事なのかを見失って、間違った恐怖を感じている状態です

――どうして、それが起こるのでしょうか?

安藤:それは「素の自分」に戻っているからじゃないですか。

 一人の人間として考えれば、「相手に嫌われたくない」「信頼を失ったらどうしよう」と不安になって、恐怖を感じるのは当然の原理ですよね。

 だから、「素の自分」というか、一人の人間に戻ってしまったら、さまざまな恐怖が降り掛かってくるのは当たり前です。

――だからこそ、この本のタイトルでもある『リーダーの仮面』ということですか?

安藤:まさにそうです。

「仮面」という表現はそもそも識学にはなくて、ダイヤモンド社の編集者がつけてくれたタイトルですが、初めて聞いたときは「さすが、うまいこと言うな」と思いました。

 識学の言葉で言えば、「機能」です。

 上司やリーダーはもちろん、社員というのも機能ですから、その機能を果たすためには、やはり「素の自分」ではなく役割としての「仮面」が必要です。

 素の自分とは別の役割として、機能しなければならないからです。

 だから私は「素顔を変えろ」とか、「人間性や性格を変えろ」と言っているのではありません。それは、もちろんそのままでいいわけです

 ただし、組織のなかで機能するためには仮面をかぶることが必要です。

 もちろん最初は、私も多少の抵抗はありました。前職では、どちらかと言うと「人気者のリーダー」でやっていましたから。

 でも、やってみれば、その葛藤はすぐになくなります。

 識学のやり方の方がストレスがなく、楽ですし、再現性が高く、圧倒的に成果が出ますから。

「部下に好かれたい」というリーダーは結果が出せない安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長 1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社を経て、ジェイコム株式会社(現:ライク株式会社)にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2021年1月現在、約2000社の導入実績がある。主な著書に『リーダーの仮面』がある。

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「部下に好かれたい」というリーダーは結果が出せない