『週刊ダイヤモンド』5月15日号の第一特集は「戦慄のK字決算」です。新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄された2020年。多くの企業は大打撃を受け、戦慄の決算発表が迫っています。今回の決算を象徴する言葉は「K字」。コロナ禍からの回復は一律ではなく、回復できる企業と落ち込む企業へと二極化するK字を描くというのです。明暗を分けるポイントは何か。戦慄のK字決算をダイヤモンド編集部の総力取材で先取りします。

21年の経済成長率は軒並み上方修正
ワクチン接種が進む中、日本は一人負け

 世界では新型コロナウイルスとの戦いの「出口」が見え始めたようだ。

 4月6日、国際通貨基金(IMF)が公表した最新の「世界経済見通し(WEO)」。2021年の世界経済(実質GDP<国内総生産>)の成長率はプラス6.0%になるという見通しで、1月時点の予測から0.5ポイント上方修正した。

 コロナショックに見舞われた20年の世界経済成長率はマイナス3.3%と、第2次世界大戦以降で最悪を記録した。そこから一転、21年は1980年以降で過去最高の成長率となる予測で、「不透明感の高い中でも公衆衛生と経済の危機の出口が見えてきた」とIMF経済顧問兼調査局長のギータ・ゴピナート氏は総括した。

 IMFのレポートによれば、年始の予想を上回る経済回復の背景にあるのは、ワクチン接種の普及や米国などの巨額財政支援、そして新しい働き方への適応だ。その一方で、ゴピナート氏はこう警鐘を鳴らした。

 経済の回復について、各国間および各国内で危険なほどの差が開きつつある──。

ゴピナート氏の指摘通り、今回経済成長率を大きく上方修正した国に共通するのは、コロナのワクチン接種が進んでいることだ。

 例えば成長率を1.3ポイント上方修正して6.4%の見通しとなった米国では、ワクチン接種回数が2億回を超え、必要な回数のワクチン接種を完了した人の割合が3割弱に達している(4月25日時点)。

 他にも、人口の2割弱の接種が完了している英国の成長率は0.8ポイント上方修正して5.3%と、ワクチン接種の進捗状況が、コロナ禍からの経済回復のバロメーターの一つになっている。

 こうした世界の状況と比べると、日本は他国に差をつけられている側の〝負け組〟だ。

 海外と比べてコロナの感染者数や死者数を人口比では抑え込んでいるはずの日本。ところが経済成長率の見通しは3.3%と主要国で最も低く、世界から取り残されつつある。

 日本のワクチン接種回数は他の主要国よりも1〜2桁少なく、接種が完了した人の割合で見ても主要国で唯一1%未満と、ワクチン争奪戦の〝敗北〟は鮮明だ。

 そして4月25日、東京や大阪などで3度目の緊急事態宣言が発令された。なんとしても感染拡大を抑え込み、東京オリンピック・パラリンピック開催にこぎ着けたいのだろうが、再度の経済の冷え込みは避けられない。

業績の二極化進む「K字決算」
上方修正は604社、下方修正は198社

 経済の回復の様相は、アルファベットになぞらえて表現されることが多い。

 急回復する「V字型」、回復に時間がかかる「U字型」、低迷を抜けられない「L字型」……。そして今のキーワードは「K字型」である。

 コロナショックからの回復は一律ではなく、回復する勢力と落ち込むグループへと二極化し、K字を描く。勝ち組と負け組の〝格差〟が開いていくというのだ。

 コロナワクチンという戦略一つで国の経済の先行きに明暗が分かれたように、コロナという非常事態や社会の激変にうまく対応できたかどうかで、企業にも格差が生じ始めている。

 その試金石となるのは、5月の大型連休明けに集中する、上場企業の20年度の通期決算だ。

 コロナショックの嵐が吹き荒れた20年春から夏にかけて、ほとんどの企業の業績は大きく落ち込んだ。その後の回復度合いは企業によって格差がある。

 帝国データバンクによれば、3月を決算月とする上場企業のうち、21年3月期の通期業績の修正を発表した企業は802社ある(2月末時点)。

 このうち売上高の予想を上方修正したのは604社だった一方で、下方修正は198社。業績を修正した企業の約75%が上方修正していたのだ。業種別で見ていくと、回復度合いの格差が顕著に表れている。

12業界「勝ち組・負け組」大解剖
上場500社の“明暗”ランキング

『週刊ダイヤモンド』5月15日号の第一特集は「戦慄のK字決算」です。

 新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄された2020年。多くの企業は大打撃を受け、戦慄の決算発表が迫っています。今回の決算を象徴する言葉は「K字」。コロナ禍からの回復は一律ではなく、回復できる企業と落ち込む企業へと二極化するK字を描くというのです。

 企業の明暗を分けるポイントは何か。特集ではダイヤモンド編集部の業界担当記者が、自動車や銀行、証券、鉄道、アパレル、不動産など主要12業界を総力取材。トヨタ自動車の“一強”を攪乱する存在として浮上したメーカーや、コロナ禍でも貸せる・貸せない101行の独自ランキング、証券会社の「第2のアルケゴスリスク」など、二極化が進む企業の「勝ち組・負け組」を深掘りします。

 さらに、コロナショックからの売り上げの回復度合いや資金繰りなどを基に、上場500社の“明暗”ランキングを作成。1位はエムスリー、2位はヤマトホールディングスなど、K字経済の世界で生き残る可能性の高い会社を検証しました。

 大型連休明けの企業の通期決算発表の集中日の前に、K字決算と株価を先取りする1冊です。