医療体制のひっ迫も同様で、医療従事者の配置など多くの問題点はあるものの、日本の医療体制は総じて貧弱であり、ワクチン接種前の諸外国レベルまで感染が拡大すれば手が付けられなくなると国民は考えているのではないだろうか(日本の医療従事者数は人口当たりでは各国と同水準だが、患者1人に対する医療従事者の数は諸外国と比較して3分の1程度しかおらず、過度な負担がかかっているのは事実である。関係団体を含め、もっと柔軟に対応する必要があるというのはその通りだが、慢性的に医療従事者の負荷が大きいという現実は変えられない)。

 こうした状況下で、飲食店などを中心に深刻な影響が及んでいることについても国民は理解しているが、ワクチン接種が進まない以上、自衛手段として外出を自粛する以外に方法がない。ガマンにも限界があるので、今回の宣言期間中の人出は前回よりも多いかもしれないが、逆に言えば、宣言が発出されなかったからといって、皆が何不自由なく外出するのかというと、そうではないだろう。

 一部の論者は患者数の増加をメディアがあおっているとたたいているが、メディアをたたいたところで、ワクチン接種が遅れているという致命的な現実がある以上、多くの国民が慎重に行動することを抑制するのは不可能である。こうした慎重な国民に対して「非科学的だ」「経済をつぶすのか」と威圧的・暴力的に対応したところで逆効果にしかならない。

 大方の日本国民が、国内の状況について自主的に判断し、慎重に行動しているという前提に立った場合、今回の宣言発出は致命的な影響は及ぼさないものの、早期に解除したところで(感染者数が減少に転じないことには)消費は戻らないと考えた方がよいだろう。

ワクチン遅延で懸念される
諸外国との決定的な格差

 4~6月期のGDPについては、宣言発出によるマイナス効果と、1~3月期の反動という二つの側面があるため、筆者はほぼゼロ成長と予想している。7~9月期については、オリンピックが予定通り開催された場合、それなりの経済効果はあるので、多少持ち直すかもしれない。だが、オリンピックを強行すれば強行したで、少なくない国民が感染拡大を懸念し、さらに行動を自粛するだろう。結果としてオリンピックによる効果を相殺してしまう可能性も十分にあり得る。

 宣言の有無にかかわらず、国民は慎重になっているので、飲食店に積極的に足が向くとは考えにくい。飲食店については、従業員の雇用が維持されるよう、引き続き政府が積極支援していく必要がある(飲食店の経営が厳しいことは国民もよく分かっており、支援を強化することやその国民負担についてはある程度、合意が得られるのではないだろうか)。