また、中国軍産複合体掲載企業の子会社などが発行した社債(2029~2030年償還)の平均利回りは3.1%と、10年ものの米国債利回りより200ベーシスポイント(bp)強も高い(ベーシスポイントとは金利の表示単位で、0.01%のこと)と指摘し、「国際投資家たちは、中国資産をより手に入れたがっている。一歩引いて大きな構図として見ると、中国人民元の保有を増やし、中国債券をポートフォリオに加えたいという世界的な意欲は大きい」とも報道した。

 企業が行うエクイティファイナンス自体は何の問題もない。しかし、アメリカの資本市場で調達された資金が、中国軍の兵器近代化に使われて安全保障の脅威となるのであれば、話が変わる。

 自国の安全保障に悪影響を及ぼす事態を避けるために必要な規制と金融機関の手数料収入の機会が失われる問題を同列で論じることは、次元が違う議論だ。

 にもかかわらず、自分たちの懐に入る手数料(もうけ)しか頭になく、中国による強引な現状変更に間接的に加担していることに頬かむりを決め込む人たちがいるのが現実だ。

 こうした投資家たちは「中国軍産複合体掲載企業の子会社などが発行した社債(2029~2030年償還)の平均利回りが、なぜ10年もの米国債よりも高いのか」の理由を考えようとしない。

 中国軍産複合体が発行する社債の利回りがアメリカで発行される国債の利回りよりも2%も高い理由は明らかである。中国軍産複合体がアメリカから中国軍の軍備近代化に使う資金を調達するためには、高い利回りという餌(=わな)をぶら下げて、アメリカの投資家をおびき寄せることが必要だからだ。

 もしも、中国軍産複合体が発行する社債の利回りとアメリカの国債が同じ利回りならば、中国軍産複合体の社債に投資する奇特な投資家はいないだろう。