ICT先進国の先生たちは、どうやって乗り越えてきたか?
政府は、巨額の税金を投資し、ICT教育のお膳立てをしてくれました。
でも、先生たちはICT教育を受けたことがない。
そして、今後もそのための研修は予定さえされていない。
では、どうするか?
結論を言うと、先生たちはもはや、自分たちで学ぶしかありません。
ここでヒントになるのが、ヨーロッパを中心としたICT先進国の事例です。
世界がコロナ禍に見舞われる直前の2020年1月、私は Google for Education主催の欧州教育視察ツアーに参加しました。その中で、フィンランド、オランダ、イギリスと合わせて3ヵ国の教育現場をこの目で視察してきました。
そこで見たものは、まさに「生きた教訓」。
教育のデジタル化で苦労していたのは、日本だけではありませんでした。
私たちより先に、世界中の教師たちが試行錯誤を繰り返し、そして乗り越えていました。
その豊富な経験から、この急激な変革をどう乗り越えるか、成功の一端を学ぶことができます。
各国各校、それぞれの苦労と乗り越え方がありました。
千差万別のノウハウに触れる中、共通の解決方法がありました。
それは、あまりにもアナログな手法…。
「先生同士のワイガヤ」です。
ICT教育に成功した先生たちが異口同音に話していたのは、一人で悩まず、ワイワイガヤガヤと同僚の先生たちと問題について一つずつ、じっくりと話し合いながら解決していくという方法です。
「ワイワイガヤガヤ」つまり井戸端会議をせよ、というだけではありません。
オープンマインドにするため、環境から徹底して変革していたのです。
たとえば、フィンランド・ヴァンターにある公立中学校では、2018年に1万4000台の Google Chromebook端末を購入、1人1台無料で使用でき、自宅にも持ち帰れるようになっています。
日本に先駆け、すでに3年前からICT教育の準備がなされているのを見るに、日本の環境整備の遅さに恥じ入る思いでした。
それ以上に衝撃を受けたのが、「教室」という現場の違いです。
フィンランドの教室は、この写真のようにすべてがオープンスペースです。
隣の教室とは簡易的なアクリルボードで仕切られていますが、隣は丸見え。
そのため、どのように教えているかが、仲間の教師に一目瞭然です。
職員室も日本とはかなり雰囲気が違います。明るい色のソファーが置かれ、決められた席がありません。
垣根のないフリーアドレスで、悩みをすぐに共有相談、その場で解決できる雰囲気に満ちあふれていました。
閉ざされた日本の教育現場との差に愕然としましたが、もっと驚いたのが、この環境が文化の違いによるものではなく、一朝一夕に創り上げられたものでもなく、試行錯誤の末にたどり着いた先生たちの「解」であったことです。