自社で大型新薬を生み出せていない武田薬品工業は日本の研究所のリストラを繰り返してきたが、ここにきて研究所発の新薬候補品がピーク時売上高6000億円級の大型品に化ける可能性が出てきた。特集『武田薬品 「破壊と創造」』(全7回)の#3では、それでも研究所閉鎖へのカウントダウンが止まらない内幕を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
リストラを繰り返した研究所から
6000億円規模の新薬候補品
武田薬品工業はかつて大型新薬を続々と自社創製したが、すっかりその力は衰えた。それが故に過去10年、大型買収と全社的な組織大再編が断行された。
神奈川県の旧湘南研究所(現湘南ヘルスイノベーションパーク)では2010年代に2度のリストラがあり、競合他社に迎え入れられた者もいれば、不本意な転職となった者もいた。
「なぜ研究実績のある自分が追いやられ、ごますりが残るのか」「こんな新組織では創薬力は上がらない」。研究所のあちらこちらで、感情の擦れ違いが起きた。
リストラ研究所の負のイメージがまだ残る20年末、突如、汚名をそそぐ発表があった。武田薬品が「30年度までに売上高5兆円企業」をゴールに掲げたのだが、根拠となる開発パイプラインの中で最も期待する「ピーク時売上高ポテンシャル60億ドル(6000億円規模)」の新薬候補品が日本の研究所発のものだったのだ。
それでも、今の武田薬品において日本の研究所の劣勢は変わらない。期待値が上がるどころか、閉鎖へのカウントダウンが聞こえてくる。