現役世代への負担軽減目指し全世代負担型に移行
でも対象は「一定以上の所得がある人」のみに限定

 近年の医療制度改革は、13年8月に出された「社会保障制度改革国民会議」の報告書で描かれた青写真に沿って行われている。この報告書では、「給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心」という負担と給付の関係を見直して、「全世代型の社会保障に転換する」という方向性が示されている。

 高齢者に対する福祉は高度経済成長期に公的な年金保険や健康保険が整備されることによって充実してきた。その一方で、90年代以降、雇用環境の悪化によって若い世代にも貧困が見られるなど、負担と給付のあり方が問題になっているからだ。

 そこで、ここ数年の改革では、従来のように一律に年齢で区切るのではなく、高齢者でも一定以上の所得がある人には、相応の負担を求めるような見直しが行われている。

 ただし、前出の報告書では、同時に「低所得層への配慮」という言葉も繰り返し使われている。また、75歳以上の人の医療費の窓口負担について言及した、19年12月の「全世代型社会保障検討会議」の中間報告書では、次のように、具体的な方向性が示されている。

後期高齢者の自己負担割合の在り方
(中略)
・後期高齢者(75歳以上。現役並み所得者は除く)であっても一定所得以上の方については、その医療費の窓口負担割合を2割とし、それ以外の方については1割とする。
・その際、高齢者の疾病、生活状況等の実態を踏まえて、具体的な施行時期、2割負担の具体的な所得基準とともに、長期にわたり頻繁に受診が必要な患者の高齢者の生活等に与える影響を見極め適切な配慮について、検討を行う。

 このように、医療改革を進めるための国の文書では、低所得層に配慮することが示されている。今回の見直しも、75歳以上の全ての人の窓口負担を引き上げるのではなく、一定以上の所得がある人のみに限定された。