「情報」取り組みに対する学校間の温度差

 先に、ほとんどの生徒はプログラミング抜きで教わったと書いた。その原因は、教えることのできる先生が多くの学校にいなかったからである。各県の教育委員会も「情報科」教員免許の所持者を採用する動きはさほど迅速ではなく、21年でようやく採用ゼロの空白県がなくなったような状況である。

 首都圏私立中高一貫校121校から寄せられたアンケート結果によると、8割近い学校ではすでに情報科の免許を持っている専任教員がいる。複数の教員がいる学校もある。数学や理科の教員が、別途取得している例があるからだろう。現在、兼任も含めて保有者ゼロはわずか2校だったが、もちろん22年には何らかの手当てを行うことになる。

 必修となる「情報I」は、高1で履修することになる学校が多い。中には2単位のうち1単位を中3で、という学校もあった。学校独自のカリキュラムを柔軟に組めるのが、中高一貫校のメリットである。それを「情報教育」でいかに発揮できるか、これもまた志望校選びのチェックポイントとなるだろう。

 例えば、洗足学園は「ICT講座」と銘打って、情報リテラシーからスキルの習得まで一貫して学ぶことを意図している。小中高一貫教育を行っている玉川学園では、6年生(小6)から10年生(高1)まで5年間連続して情報教育を実施している。

 総合的な学習(探究)の時間を利用して取り組む学校も多い。こちらには実技的なものがそろっており、スマホアプリ開発、映像編集や3Dプリンター造形、ポスターデザインなど、楽しそうな内容が並んでいた。

 こうした情報教育によってICTリテラシーを身に付けていくことは、新しい学習指導要領が前面に掲げている「学力の三要素」(知識・技能、思考力・判断力・表現力、主体性を持って多様な人々と協同して学ぶ態度)のあり方と軌を一にする。

 大学に入ってからも、中央大、早稲田大などではデータサイエンスの素養を全学部生に付けてもらおうと、教育体制を整えている。中高からきちんと学んでおくことはとても大切なことなのである。 

 この連載と連動する形で、「本当に子どもの力を伸ばす学校」(ダイヤモンド・セレクト2021年8月号)が7月8日(木)に発売予定となっている。すでにネット書店では予約も開始されている。ぜひ今年も、お手に取っていただければ幸いである。